出版社内容情報
森 治[モリ オサム]
著・文・その他
内容説明
ユダヤ人ツェラーンの原体験は第二次世界大戦中の迫害、なかんずく強制収容所での両親と同胞の死である。非人間的な極限状況を生きのびた詩人はアドルノがいうアウシュヴィッツ後の不可能な時代にあって、詩の可能性を追求した。不可能から可能への転換には詩人の内部での限界突破という決定的な出来事が絡んでいるが、その通過が逆に絶望的な限界に対して積極的・能動的にはたらくのである。傷はすでに傷のままに癒され、創として創造への契機となる。詩人は倒錯的ともいえる強い信念をもって、新たな現実と対話としての詩の相手を求めて一歩を踏み出す。解体した言葉と世界は新たな結合のもとに、可能的な言葉世界へと再構築される。本書では、ともすれば消極的になるツェラーン読解を反転させ、肯定的・積極的な面を解明する姿勢を貫こうとする。
目次
1 詩人となるまで―パウル=アンチェル(故郷ブコヴィナ;幼少年時代;大学時代;迫害の嵐;再出発)
2 詩人として―パウル・ツェラーン(死をめぐって;回帰する時間;深淵への下降;「水」との出会い;無の栄光;他者;否定性の実現;裏返しの讃歌)
著者等紹介
森治[モリオサム]
1946(昭和21)年、名古屋市に生まれる。東京教育大学大学院修士課程修了。現在、静岡大学名誉教授。ドイツ文学、特に抒情詩を専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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