出版社内容情報
関 楠生[セキ クスオ]
著・文・その他
内容説明
ドイツ語の“白バラ”は大文字で書かれ、固有名詞化されている。それだけよく知られているということだが、日本ではインゲ=ショル著の本は『白薔薇は散らず』、映画は『白バラは死なず』というふうに紹介されている。このほかにも“白バラ”関係の著訳書は何冊かあるが、なお、この語がよく知られているとは言いがたい。ヒトラー治下のドイツで、独裁体制に対する抵抗運動に立ち上がった大学生たちが作製し配布したビラの名が“白バラ”であることから、彼らを“白バラ‐グループ”とよぶのである。ミュンヘン大学で毎年二月、刑死したこの人たちを追想し記念する催しが行われる。彼らの抵抗が非政治的、精神的なものにとどまり、その運動を挫折ととらえるべきか、あるいはまた、のちのちまで影響を残す高次の政治的なものだったかをめぐって、なお論議がある。
目次
1 抵抗運動の学生たち(“白バラのビラ”出現;学生の生い立ち;精神的な師たち;東部戦線での体験)
2 抵抗運動の活動と挫折(抵抗運動の再開;抵抗の実際活動;挫折の問題;運命の日、一九四三年二月一八日)
著者等紹介
関楠生[セキクスオ]
1924(大正13)年、静岡に生まれる。東京大学文学部ドイツ文学科卒業。東京大学教養学部教授、獨協大学外国学部教授を歴任。東京大学名誉教授。2014年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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富士さん
4
初めて読んだ時は何だか退屈だなと思ったのですが、改めて読み直すと、思わぬ感慨がありました。正直、抵抗運動としては陳腐で、無理やり政治史とつなげようとすると無理があるように思いますが、戦時中の大学生や青年将校の心性を描く社会史として構成していれば、もっと魅力的だったのではないかと思いました。特に、ミュンヘン大学でナチの大管区指導者を吊し上げ、謝罪に追い込んだことは、抵抗ではなくても、社会の重要なものを反映しているでしょう。一般的なドイツ人の生活誌研究もあるようなので、それをふまえた方が効果的だと思いました。2022/01/31