出版社内容情報
安田 一郎[ヤスダ イチロウ]
著・文・その他
内容説明
フロムは二六歳のとき外面的にはユダヤ教の信仰を捨てたが、その影響はのちのちまで彼の生活と著書に色濃く残った。親しい人の集まりで、彼は好んでユダヤの古い歌を歌ったと伝えられている。しかしその一方で、彼は、マルクス主義の解説書を書くほど、マルクス主義についての造詣が深かった。彼のなかではそれらは完全に統合されて彼はマルクスの疎外について語るときも、旧約聖書の文句を引用するのを忘れなかった。晩年彼は老子の教えに共鳴したが、それは、「正言は反するがごとし」(真理は逆説的である)と説く老子の思想が弁証法的だと考えたためであった。第二次世界大戦後に登場した思想家のなかで、フロムほどその著書が広く読まれた人はいないが、それは、左右・東西にまたがるその該博な知識によるところが大きいように思われる。
目次
1 人間フロム(その生いたちと戦争の時代)
2 精神分析とマルクス主義の統合(分析的社会心理学;母権と父権;権威の心理学)
3 新フロイト派の形成(『自由からの逃走』;フロイト理論の修正;愛の理論;悪―攻撃性と破壊性)
著者等紹介
安田一郎[ヤスダイチロウ]
1926(大正15)年京都に生まれる。東京大学文学部心理学科卒。元横浜市立大学教授。医学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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カラス
1
フロムの著作と思想の解説がメインの本、入門書というよりも、解説書であり参考書、みたいな感じ。フロムの人生に関しては判明していることが少なく、その生涯についてはページ数は少なめだが、そのぶん、思想と著作についての記述が充実しており、読み終わったあとの満足感が高い。印象としては、フロム本人が自称するようにフロイト理論の継承者であり発展者という感想を持った。ただ、全体的にやや楽天的で、悪に対する解釈は浅いように思えるし、そこまで合理的に考えることができるかな、と疑問に思った。2018/12/07
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- ニムロッド 講談社文庫