内容説明
第二次世界大戦以前の日本でのビスマルク評は、いわゆる「鉄と血」の意志で対デンマーク、対オーストリア、対フランス戦争で勝利を収め、ドイツを統一した建国の大立者というものであった。これが民主主義の時代になると、「文化闘争」や「社会主義者鎮圧法」などで強権を振るった保守反動の政治家、そしてヒトラーにつながる血なまぐさい軍国主義者というイメージが強くなり、一般に敬遠されるようになった。本書では、ビスマルクの実像に迫るため、ビスマルク個人の私生活とその生身の人間像にも視線を向ける。そしてビスマルクの政治と彼の成し遂げたドイツ統一の意味を、当時の日本との関連、また1990年のドイツ再統一や「欧州連合」との関連も踏まえながら、今一度、検証しようとするものである。
目次
1 生い立ちから結婚まで(ビスマルク誕生前後のドイツの状況;幼年時代;初等教育、中等教育 ほか)
2 政治家ビスマルク(政治への道;三月革命;反革命 ほか)
3 ビスマルクの人物像と業績(ビスマルクの敵;ビスマルクの人物像と業績の総括)
著者等紹介
加納邦光[カノウクニミツ]
1940(昭和15)年、北海道に生まれる。東北大学大学院文学研究科修士課程(独文学専攻)修了。現在、北海道大学教授。2001年4月から北海道情報大学教授
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感想・レビュー
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中島直人
4
(図書館)完全無欠の英雄でも、ヒトラーを生んだ極悪独裁者でもない、今まで知らなかった生身のビスマルクを見ることが出来て、面白く読めた。2021/07/25
ダージリン
1
白色革命家とは上手い表現。普通選挙、社会保障制度を世界に先駆けて導入した点は評価されて然るべきだろう。鉄血宰相のイメージとは異なる一面だ。権謀術数と不可分の政治手法は凄いものがある。賛否両論あろうが、恐らく真似出来る者はそうそういまい。独善的な権力者ではあったのだろうが、ドイツ興隆に大きな貢献があったことは疑いの余地がない。2014/08/15
tsukamg
0
高邁な理想とは縁遠い現実主義者で、外交の職人。19世紀に突如現れた中世の人物。普仏戦争後に領土拡張的行動を一切とらなかったバランス感覚は、ナポレオン、ヒトラーとは違う。2014/02/09