内容説明
リルケが愛や孤独の詩人というのは本当だ。彼が広く愛されるのも、詩に読者が共通する何かを感じとるからである。だがそれだけでは、何故リルケが世界的に読まれるかを説明できない。リルケは哲学用語を用いずに現代の人間と事物の存在内容を根底から問い、歌った詩人だった。その思想性は、日本の俳句に出会い、短詩型と俳人の詠視に西洋のエピグラムとは異質の、自分の詩との深い関わりを認める鋭い柔軟性に貫かれていた。彼の詩精神のこの越境性こそリルケの巨きさにほかならない。この巨きさに少しでも近づくことが、あの何故への我々の応答であろう。本書は、彼がいかにして作品を生み出したかを生涯にわたり叙述し、それらが異なる文化・言語圏へと遠く越え出ても示しつづけてやまない豊饒な文学世界へのひとつの道案内となることを念じた。
目次
1 東西を越えた彼岸に
2 若き日のリルケ
3 ロダンとのめぐり逢い
4 『マルテの手記』以後
5 晩年のリルケ
著者等紹介
星野慎一[ホシノシンイチ]
1990(明治42)年長岡市に生まれる。東京大学文学部ドイツ文学科卒。文学博士。旧制成城高等学校、埼玉大学、東京教育大学、南山大学、各教授歴任。1998(平成10)年逝去。主著=『晩年のリルケ』、『ゲーテと鴎外』、『ゲーテと仏教思想』、『俳句の国際性』、『ゲーテ』(人と思想)ほか、創作詩集、著訳書多数
小磯仁[コイソマサシ]
1938(昭和13)年、館山市に生まれる。慶応義塾大学文学部卒業、同大学院修士課程修了。Deutscheforschungs Gemeinschaft共同研究員、ヴェルツブルク大学専任講師を歴任。現在、山梨大学教育人間科学部、大学院教授。ドイツ文学専攻。主著=『近代ドイツ抒情詩の展開』、Internationale H¨olderlin-Bibliographie.Musikalien und Tontr¨ager.(共著)、『ベルダリーン』(人と思想)ほか。訳書=ベーダ・アレマン『ベルダリーンとハイデガー』、『ベルダリーン 詩的なる精神』ほか
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感想・レビュー
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まりん
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