内容説明
ナイチンゲールの人とその仕事についての研究が進んだ結果、彼女は看護婦と呼ぶには大き過ぎる存在であることがわかってきた。看護はナイチンゲールがまぶしくも特異な生きかたの現象であることを思い知らされ、看護の世界は彼女を看護婦のシンボルと言い立てなくなった。ところが一般社会では、今なおナイチンゲールといえば看護である。彼女の名を一夜にして高めた、“クリミアで傷病兵を看取る天使ナイチンゲール”のイメージがもっぱら通用している。本書は、看護婦の一人である筆者が、フロレンス・ナイチンゲールが何を考えどのように生きたかを描いた小伝であり、ナイチンゲールのイメージの落差“なぜ”への回答でもある。
目次
1 兆し
2 目覚め
3 待機
4 助走
5 その時
6 陸軍の衛生改革
7 看護発見
8 余波
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
目黒乱
17
上流階級にありながら、当時、卑賤とされていた看護婦の職を希望し、激烈な意志と実行力でもってあらゆる旧弊をなぎ倒していったナイチンゲール。「白衣の天使」(実際にはナイチンゲールは黒いドレスを着ていたらしい)とよぶには凄まじすぎるその生涯にただただ感嘆するが、目的のために協力者をこき使い、罵倒するという悪魔的な面もあった。興味深いのは彼女が統計学を非常に好んだということである。史上、最も戦闘的な統計学者。という表現もネットでは見受けられる。そういえば統計学は最強の学問という本もあったなあなどと興味はつきない。2015/09/03
ゆきうさぎ
5
自分の夢(看護職)に反対する母親との闘い。女性看護員を格下に見る男性医師達との闘い。貧民を救う熱意に欠ける上流階級との闘い。子ども向け偉人伝などで読んだ”愛と献身の白衣の天使”のイメージは覆される。天使というより闘士。「病院の改革=患者の回復率UP」のために徹底したデータ主義をとり、時に人を酷使し脅して押し進めた豪腕の人。もはやナイチンゲールと言われたら”データと理論の辣腕改革者”というフレーズしか浮かばない。彼女の生の人物像が現れて面白かった。2015/11/13
富士さん
3
昔福祉をかじっていた時に読んだ本。再読。これを読むとこの人の一般的なイメージが如何に不当か分かります。介護、栄養、保健、衛生、福祉など全般に及ぶ社会活動こそがこの人の看護であり、看護師がただの看護技術の専門家になれば、人を治すのではなく病気を処置するだけの医学に抱合されて矮小化してしまうことを恐れたのではないでしょうか。この時代に実務的な視点から”社会”という概念を析出し、20世紀に流行するこれらの分野の先駆者のひとりとして評価されるべき人物が、小手先の理解で片づけらる向きは如何にも残念なことです。2017/04/16
えすてい
3
「人と思想」シリーズの中でも、ナイチンゲールの生涯を順に綴った伝記形式。生涯編と思想編に分かれておらず、生涯を順にたどりながらナイチンゲールの思考を見ていくというもの。青年期までのウツウツとした生活のことが結構長く続くので、子供向け伝記に書かれているようなイメージは避けた方がよろしい。著者は日本人のナイチンゲール研究第一人者ではあるものの、看護師や看護学生以外にも読みやすい平易な文章だった。
おの
2
図書館本。ずっと読みたいと思っていてようやく。凄まじい熱意で大きな仕事を為し遂げつつ、その周りで犠牲になった人がいる。うーん、難しい。2018/09/23
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