SF文庫   3-A<br> 時は乱れて

SF文庫   3-A
時は乱れて

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  • 商品コード 9784387861881
  • NDC分類 933

内容説明

男の名はレイグル・ガム。独身、46歳。アメリカの一地方都市で、この男のことを知らぬものはいない。新聞の懸賞クイズ「小さな緑の男は次にどこへ行くか?」に毎日毎日勝ちつづけている男なのだ。時は、1959年。だが、時々、レイグルは自分が、なじみのない他人に思えることがある。そして同居している弟夫婦も。たとえばある時、洗面所であると思ったスイッチがないという弟の体験、子供が近くの廃墟から拾ってきた雑誌の記事、鉱石ラジオから傍受した奇妙な通信、ついに町を出ようとしたレイグルは、なぜか警察に追われ、一軒の家にたどりつく。そこで見た新聞の日付は1997年5月10日、なんと彼レイグルに関する記事が載っていたのだ。卓抜なアイデアと巧妙なトリックで構成されたストーリーは、やがて壮大な宇宙ドラマへと突入する。米国SF界の巨匠が放つスリリングな世界。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

sin

70
日常が崩れていく…パラノイアの証明がここにある。かつてソビエトとの冷戦に疑心暗鬼に陥らされた米国民の不安がSFと云う手法で描き出される。近年流行りの死と云うスイッチで安直に自分と云う存在を切り替えてしまうことなく、当たり前の生活に影を落とす不協和音となる事物の存在が明かされて少しずつ1人の男の実存を追い詰めていく、後半にかけての展開が無理矢理に纏めてしまった感は拭えないので残念ながら良作とは思えないがディックらしさのあふれる作品であることは間違いない。2022/12/16

GaGa

42
デッィクとしては非常に安定した時期に書かれた作品で、読みやすく、破綻も少ない優等生的な作品。なのになぜ今新訳が出ていないのか非常に疑問。スタイルとしては処女作の「偶然世界」にどことなく似ている。まあ、これもいずれどこかが出してくれるでしょう。でも新訳でなくて、この訳のままで充分楽しめますよ♪2012/10/19

いいほんさがそ@蔵書の再整理中【0.00%完了】

16
*SF*時は1959年。レイグル・ガム、この男を知らぬ者はいない。新聞の懸賞クイズに連戦連勝する豪運の男!しかし、いつしかこの順風満帆過ぎる人生に強い疑問を持つ様になる。そして街を出た彼が目にした新聞の日付は1997年?これは一体どういうことか!?――"今まで生きて来た日常は実は、巧妙な○○だった的SF"のあらゆる元ネタと言っても過言ではない本作。日常が徐々に、しかし確実に崩壊していく過程。陥る疑心暗鬼。狂ったのは自分なのか世界なのか。そして薬物中毒&幻覚症状・・・。著者の容赦なさっ振りが素晴らしいSF!2013/02/06

がんぞ

4
なぜ箱庭的世界にマリリンモンローは存在してはいけなかった?ケネディ大統領→ミサイル競争と《SF的現実》が浮上してくる恐れがあるのだろう/『エンダーのゲーム』みたいな構図というのは容易に想像できるが、ルナティック(月世界人)の立場から見れば『月は無慈悲な…』、しかし実はやがて《共産主義者封じ込め》で介入の泥沼にはまるベトナム戦争を予見したとも見える、冷戦は決して冷たくなかった(発表も作中の設定も)1959年といえば米国がベトナム戦争に本格参入する前。平和主義者は「対話」が共産主義者相手に通用すると思っていた2017/06/18

ニミッツクラス

4
78年の初版で、カバーは地球と月と何故か上半身裸の主人公レイグル(だと思う)。やや薄口ながら、知らずに読んでもやっぱりディックだと判る筆致の長編。59年米の地方都市が舞台(一応の設定)で、ガゼットの懸賞問題に生活を委ねている感のあるレイグル。その懸賞の仕組みが良く判らないが、そこはスルーしても良い。懸賞にも裏があるが、物語全体を通してサーベイランス系の裏設定があって、主人公は人生に弾力のある不条理を感じ始める。87年の新装版のカバーは物語を突き抜けてしまって却って読後のガッカリ感を誘うかも。★★★★☆☆2013/06/12

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