内容説明
「唯一の真実の数は1であり、残りは単に繰り返しにすぎない」このナボコフの発言は、ジョイス、プルースト、プーシキンなどの文学遺産を通ってプロチノスまで遡ることができる。現実が虚構の繰り返しか、その逆か。ともかく合わせ鏡ともいうべき意識の地獄を覗くために双生児のイメージが多用されるのは当然のことだ。同姓同名の男にまちがわれてレストランの鏡をこわしたといって逮捕されたり、借りたこともない本の返済を迫られるポオの「ウイリアム・ウイルスン」を思わせる「一族団欒の図、1945」、18才で傑作を書いてロシアのランボーといわれ、24歳で溺死したはずの詩人ペーロフを自称する老人が記念祭に現われる「忘れられた詩人」、家族から見世物にされる怪物双生児の話を読まれるがいい。本書は文体の魔術師ナボコフの溜め息の出るような美しい短編集である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
40
沼野充義先生ご推薦の「フィアルタの春」だが、読んでから間が空き過ぎて内容を忘れてしまった。 沼野先生も、先日twitterでこぼしておられたが、とにかく読んでも内容をすぐ忘れてしまうようになった。 この調子だと、「史上最高の短編10作」選びは、かなり難航しそうだ。 2019/06/29
†漆黒ノ堕天使むきめい†
8
面白いとは思ったけども、理解しきれなかった印象。熟読が必要だな。また読もう。2017/06/27
ねみ
2
1ダースなのに13編ある短篇集。詩的な比喩と不思議な描写でストーリーが追いにくかったり「え、ここで終わり?」って幕切れのものもある。翻訳モノ特有のクセなのかもしれないが読み慣れるまでがなかなかシンドイ。ひと通り読んだけど理解できてないものが2,3あるので再読予定。2013/02/23
梨
2
ナボコフの作品はどれも記憶について書いているらしい。「ぼくの書く小説をぼくは一種の天空図のようなものと考えているから、点ひとつピリオドひとつがすべて役割をもつ」のだそうで、今度は文章全ての意図を汲み取るつもりで再読しようと思う。2009/09/11
takeakisky
1
大分口当たりの良いものばかりで、ふーんと読んでいたが、いつかアレッポで…で慌てる。そして、マドモワゼルO。この2篇と冒頭のフィアルタの春、夢に生きる人、いや、やっぱり13篇しかないのだから全部読んでおいた方がいい。 旧装版で読む。2022/05/06