内容説明
自殺を決意した一知識人トッド・アンドルーズの一日を追いながら、ついには自殺の根拠をすら失わざるを得ない窮極的なニヒリズムを、多層的な語りの手法とブラックユーモアで描き、20世紀後期の最大傑作『酔いどれ草の仲買人』の作者の記念すべき処女作となった「ニヒリスティック・コメディ」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミムロ犬
1
「ほとんど死」んでいる弁護士の男トッド・アンドルーズが朝の起床とともに自殺を決意して一日が始まる。しかしそもそもこの小説の枠はその自殺男が後年に書いた回想記というわけだから身も蓋もない。それはともかくその形式のおかげで話は一直線には行かず、一歩進んで二歩下がる方式で事あるごとに回想が惹起され頁が膨らむ。小説のテーマ自体は若書きだなということで置いとくとして、それよりも時折挿入される、「物」を起点にして描く場景が良い。淡い透明感なぞ寄せ付けない、生きた心地を実感するまさしく生(ナマ)の場景は括目すべき美文。2018/04/06
いなろ
0
おもしろかった。文体・語り口がいい。最後の話の解決の仕方はいまいち。2022/12/11
げんなり
0
なんだか分かんないけど、最近その名前が気になってしょうがない著者の処女長編との事、面白く読み終えた。訳者解説を読む限りではあんまり褒められていないし、仰る内容ごもっともなのだけど、それでもやっぱり楽しめる。若書きの鼻に付く感はあって、でもそれは語り手の若さだとすれば気にならないし、父親への愛慕が唐突に語られ始める気はするけれど、それも自分の行動の理由をこじつけてるからと思うと納得する。沢山のカニとか栗を食べてた様な読後感。めんどくさく読み進めていくと、ぐわっと旨味が広がり、そういう事を最後まで楽しめる。2019/10/22
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- 和書
- 「自閉島」より愛をこめて