内容説明
大学紛争後の荒廃したキャンパスで、英文学科教授ケイト・ファンスラーと地方検事補リード・アマーストの婚約披露パーティーが開かれた。その席上、社会人学部の廃止を強硬に主張していたカドリップ教授が倒れ、エレベータの不可解な事故も手伝って教授は息をひきとった。だが、調査がすすむにつれて、「事故」は次第に殺人の様相を帯びてくる。そして、あらゆる証拠があからさまにケイトの方を指さしている…。プロフェッサー探偵ケイトの人気を決定づけた魅力編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
282
アマンダ・クロスは初読。本書は、学者探偵ケイト・ファンスラーを主人公にしたシリーズ第3弾にあたる。翻訳で読む限りは、読者層が想定しにくい。ミステリーファン向けだとすれば、おそらくはもの足りないだろうし、その一方で小説としての妙味にも欠けるようだ。オーデンを再三にわたって引用するペダントリーも、小説に奥行きと膨らみを与えているかというとそれほどでもない。つまるところ、この一連の小説の愛好家は、一歩引いたところからミステリーを楽しむインテリゲンチャといったところなのだろうか。私はその読者層ではないようだ。2018/03/15
ケイ
114
人気シリーズ 女教授探偵ケイトの第3段。学生運動により占拠された大学だが、社会学部だけは無償だった。その学部の生徒によるもの。でも、大学は社会学部潰しをねらっていて、教授たちも賛成と反対に二分される中で起こった死亡事件。さて、殺人なのか? 舞台設定や動機がこの時代ならではといえ、独特な新鮮さ。解決もあくまでもサラリとで、どぎつくない。ケイトは今で言う勝ち組になるのだが、それを殊更強調するので、このウーマンリブの時代に反発をかわなかったのかと気になった。2016/06/22
NAO
72
サラ・パレツキーは、女主人公のケイト・ファンスラー教授を「私たちが待ち続けていたヒロイン」と呼んだという。だが、彼女は特に何かをするわけでもなく、推理と調査をするのは主に彼女の恋人のリードだ。ならばどうしてケイトが必要だったのかというと、それは、この作品が書かれた時代と関係している。この作品では殺人事件の扱いの比重はかなり軽めで、殺人事件よりも大学の社会人学部が存続できるかどうかが話の中心になっており、ケイトがそういった大学の一大事にかかわっているということこそがこの作品の一番重要なモチーフなのだ。2019/10/30
セウテス
56
教授探偵ケイトシリーズ第3弾。ケイトはニューヨークの大学英文科の教授、スリムで洗練されたイメージです。学生運動が吹き荒れる60年代には既に登場し、女性解放運動後現れた女性探偵たちのパイオニアである。物語は英文科オフィスで行われたケイトの婚約パーティーの最中、一人の教授が亡くなってしまう。調査の結果殺人の疑いがあり、あらゆる証拠がケイトを犯人と示すものであった。ミステリとしては淡々としていて、むしろ社会の変動に伴う女性の意識改革や社会問題に、大きな影響を受けた作品だろう。日本で人気が無い事は、残念でもある。2017/08/14
花乃雪音
13
サラ・パレツキーに「私が待ち続けたヒロイン」と言わしめる彼女が創作したV・I・ウォーショースキーなど後の女性探偵の魁となる英文学科教授ケイト・ファンスラーが探偵を務めるシリーズ3作目。大学の社会学部存続が話の中心となるため殺人事件の扱いが話を転がすための道具にされているように思える。社会派ミステリーの様相も見受けられるが時代性を感じさせる程度にとどまっている。シリーズ初読なので1作目なら違う評価をするかもしれないが、そこまで読みたいと思える小説ではなかった。2023/10/23
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