内容説明
小さい“つ”はみんなの笑い者。「自分は必要ない…」と家出をしたから、さあ大変。五十音村にすむ言葉の妖精たちの物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
77
巻末で著者が語る執筆動機を超えて、様々な示唆に富んだ作品。多様性は無論のこと、視野を広げることを含めた育みの過程も印象的。シニカルなのが政治家の描写。ついつい最後の場面の”みっつ”にも、何か意味があるのかと思案するが何も浮かばない。一方、著者の執筆動機を踏まえずに、敢えて突っ込むのであれば、お父さんにもう少し体張ってほしかったかな。長男の引越しに伴う荷物整理の過程で、段ボールの1つから出てきた本著。以前読んだ記憶がないが、良い一冊。2021/10/23
ネギっ子gen
52
様々な文字たちが住む五十音村で、音を持たない小さい“つ”は、他の文字たちからバカにされる。自分は必要とされていないと感じた“っ”は、ある日、村を飛び立った。「僕はあまり大切ではないので、消えることにしました。さようなら」という置手紙を残して。すると、人の会話や新聞やテレビから“っ”が消えてしまって、村は大混乱に――。日本語・ドイツ語・英語など6か国語が堪能で、フランクフルトの日系証券会社に勤務する著者が、日本語の学びをヒントにした味わい深い物語。イラストも良かったです。【ちょっと、素敵なお話でしょう?】⇒2021/08/14
neimu
35
小さい「っ」が家出をしてしまうと世界が・・・。ファンタジックでユーモラスな話。家出をした「っ」が観察して気が付いたこと。「自分のほかにも口がきけない存在がある」「この世の中には声を持っていても言葉を使わないものがたくさんある」なかなか哲学的な示唆も含む。童話的にハッピーエンドで終わっていたけれど、意味深なお話。ちょっとした道徳の教科書のようにも。体の働きを説明したイソップ童話も連想。2013/01/11
さと
32
人に伝えること、聴く事、察する事、感じる事…。言葉を使って仕事をしている私には微笑ましくも新鮮な一冊だった。小さな「つ」の存在を通して、私たちが持つ個性と存在することの必然を再認識。 作品の中で国会を皮肉ったくだりが面白い。2014/07/10
空猫
28
題名から筒井氏の『残像を…』を連想した。確かに「っ」を始め文字が消えてしまう話だが、こちらは「っ」が消えると❬「失態(しったい)→死体(したい)」❭となる世界で、何とも可愛らしい童話だった。「っ」は「つ」の息子で「み」さんと仲良しなんですって。作者はドイツ人なのに、ひらがな五十音の話とは疑問だったが、日本語を習得しているそうで納得した 。 文字それぞれのキャラが楽しいし、挿し絵もユルい感じでほっこり(´ω`)2021/02/02