出版社内容情報
「ちいさなちいさな王様」で日本でも人気のある著者が、家族や冷蔵庫との日々をときにグロテスクな、ウィットと憂愁に満ちた文章で描くエッセイ。
内容説明
冷蔵庫は夢を見るか?どうしたらケータイで留守録が聞けるのか?なぜ私がスーパーで並ぶ列はいつも進まないのか?妻も子どもも私の言うことを聞いていない、な・ぜ・だ?!『ちいさなちいさな王様』とはひとあじ違う、アクセル・ハッケの日々の報告。虚実のあわいをぬう、ときにグロテスクな、ウィットと憂愁に満ちた物語。
著者等紹介
諏訪功[スワイサオ]
1936年東京生まれ。玉川学園高等部、東京外国語大学、東京大学、ボン大学等でドイツ語、ドイツ文学、ドイツ語学を学ぶ。NHKラジオドイツ語講座講師、ウィーン大学客員教授、雑誌『基礎ドイツ語』編集長等をへて、現在、一橋大学名誉教授、独協大学特任教授
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
89
「家族がばらばらになるほど、他の人のために割く時間が少なくなるほど、キスの回数は増えていく」と〈私〉は、冷蔵庫のボッシュに話す。「じゃあ、おれにキスしてくれよ」と冷蔵庫は言う。白い金属に唇を押し当てると〈彼〉は震え、モーター音が止んだ。背後で妻が尋ねる。「ゆうべ、そんなに飲んだの?」。ユーモアとテツガク。新聞記者と作家の〈二足のわらじ〉を履く作者がドイツの新聞に連載したコラム。IT化の荒波に乗り切れず悶々とした時は、キッチンの古い冷蔵庫に向かってぼやく。まるでショートショートの物語のような鮮やかな手腕。2015/03/20
こばまり
37
ハッケとパオラと冷蔵庫。おっさんのボヤきが止まりません。暴走する妄想にクスクス。2015/04/04
りー
30
自虐や苦労話で笑いを誘うには大前提となる条件が一つだけあって、それは自虐をしている本人が心の底からは世界を貶めていないことだと僕は思っている。ネガティヴと自虐ネタは似て非なるものなのだ。そういう意味で、このエッセイは優秀だ。妻や子供や世の中のあれやこれやに文句をつけ、無二の友人である冷蔵庫のボッシュとくだを巻きながらも、ハッケは妻を、子供を、そして世界を愛しているのだろうなということが伝わってくるのだから。こういう何も生み出さない非生産的で愛すべきエッセイは嫌いじゃない。2014/01/19
tera。
24
アクセル ハッケが日々の生活での出来事を書いたエッセイ。『南ドイツ新聞マガジン』で連載され、イラストはミヒャエル・ゾーヴァ。レジに並んだら自分の列だけ進まないとか、人間は捨てる人と取っておく人に分かれる等の、日常のチョットした事って国を問わないらしい。 「パパにつける薬」と妻の名前や家族構成が変わっているって事は、そういう事なんだろうね。古い冷蔵庫兼・友人のボッシュとの会話がお気に入り。ビール片手に愚痴を言ったり、廃棄に怯える彼を宥めたりしている様子が目に浮かぶようで、クスリとさせられた。 2014/08/23
たち
22
初読みの作家さんですが、とても共感を覚えました。私も一日一回は「夕飯のおかずどうする?」って、冷蔵庫に話しかけてますもの…。ドイツの家具屋さんとタクシーは嫌だな~。ハッケさんじゃなくても怒り狂うと思います。スーパーのレジの列の話は私も全く同じ目にあったことがあります。誰にでも起こる日常の些細な出来事を、ブラックなユーモアを交えながら切り取る、ハッケさん面白いです!2017/03/25
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