感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
kero385
18
「迷誤あれば(原題:Irrungen, Wirrungen 邦訳:まよい、もつれ)」は、フォンターネが69歳で書いたベルリン社会小説のひとつ。階級の違う男女が偶然出会い、愛し合い、そして社会の慣習に従い冷静な判断のもと別れる。そしてその当時の社会通念に従って、それぞれが相応しいと思える相手と結婚する。物語はそれだけ。けれど、何だろう、この読み終わった後も胸に静かに残り続ける悲しみは。2025/09/19
kero385
16
【「ポッゲンプール家」について】 立川洋三先生訳「謎誤あれば」には、標題の長篇のほか「ポッゲンプール家」という中篇も併録されている。これまで読んできたフォンターネの作品は、人生の悲惨を静かに突き放した視点で描いてきた。そこには、読者に倫理的な気づきを促す効果があった。倫理的イロニーである。ところが、この中篇には、いままでの作品とは異なる新しい音調が響いている。それは、イロニーではなく、フモールである。2025/09/26
ばん
4
『迷誤あれば』と『ポッゲンプール家』収録。フォンターネの作品にはとにかく会話が多いが、『北の海辺』ほど写実的な記述は多くなく、どちらかと言うと群像劇的な印象を強く受けた。だが会話が登場人物の視点を代弁しているのであって、状況や気風が伝わってくる点で、老いて熟した作家であるフォンターネの優れた観察者としての見識が豊かに生かされていた。2012/09/23




