内容説明
白夜の空に雷がとどろきわたる。激しい雨の中、湖畔のカフェの女主人リンダは、横づけされたトラックから運転手が入ってくるのを待っていた…。かけこんできたのは少女だった。カウンターの椅子にすわってふるえている。せわしなくなでつける金髪はひどく不格好に刈りこまれ、銀の指輪をふたつしたか細い指が、スプーン山もり三杯の砂糖でヘドロのように重くなったコーヒーをかきまぜる。「白い毒薬」とつぶやき、少女は暗く悲しげな微笑をリンダに向けた。カナダ総督文学賞受賞。
著者等紹介
ブルックス,マーサ[ブルックス,マーサ][Brooks,Martha]
カナダで活躍中の作家、劇作家。現在までにヤング・アダルト向けに7作品を発表。『ハートレスガール』で2002年カナダ総督文学賞を受賞したほか、数々の賞を受けている。また、ジャズ歌手としてのキャリアも長く、カナダ、ヨーロッパで活動している。『ハートレスガール』の舞台ともなったマニトバ州ウィニペグ市郊外の湖のほとりで生まれ育ち、現在もウィニペグ市に在住
もりうちすみこ[モリウチスミコ]
1955年、福岡県生まれ。九州大学教育学部卒業。訳書『真実の裏側』(めるくまーる刊)は、第50回産経児童出版文化賞・推薦図書に選ばれる
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
15
砂降りの夕暮れ、リンダのカフェにノリーンという名の少女が駆け込んできた。恋人のお金と車を盗んで逃げてきたのだった。彼女は複雑な家庭環境で育ち、十七歳で姉夫婦の家を飛び出し、恋人の世話になって暮らしていた。しかし何をやってもうまくいかない自分に嫌気が差して恋人の元を逃げ出した。リンダのカフェに集うおせっかいな人々と接するうちにノリーンは心を取り戻してゆく。最初にあらすじを決めて物語を書いていくのではなく、登場人物の性格づけを行った後、その個性が導くままにストーリーを進めるという創作方法が可能となった。2005/05/18
やご
0
カナダ、湖に面したある田舎町で、それぞれに苦い記憶を抱えつつ生きる人たち。そこへ転がり込んできた行き場のない少女。わたしは元々小説はあまり読まず、ことにこういうお話はほとんど読まないのですが、これはなかなか良かった。 (続く)→ https://gok.0j0.jp/nissi/0194.htm2008/01/18