内容説明
わたし、カイバーは十一歳。母さんは元ストリッパー、双子の弟は自閉症、家はまずしい、と三拍子そろったわたしは、世間の偏見やいじめと闘う毎日。でも、わたしには探検家になる夢があるし、なぞの友人Xをはじめ、頼りになる大人の友だちもいる。なにより、母さんはわたしをよく理解してくれる。そう信じてた。ある朝、校長に呼びだされ、母さんの言葉を聞くまでは…。潔白を証明し、母さんの信頼をとりもどすには、Xをさがしだすしかない。わたしは、スキンヘッドのうろつく夜のトロントにとびだした。思春期の少女の強さともろさ、したたかさと幼さを等身大にえがいたカナダ総督文学賞受賞の話題作。
著者等紹介
エリス,デボラ[エリス,デボラ][Ellis,Deborah]
カナダ・オンタリオ州で育ち、17歳のころより、非暴力、平和運動、女性解放、反戦等の政治活動に参加。現在は、トロントの精神障害者の施設でカウンセラーとして働く。カウンセラーとしての仕事のほか、作家活動、アフガン難民を支援するNGOの中心人物として活躍中。本作で、2000年度カナダ総督文学賞(児童書部門)を受賞
もりうちすみこ[モリウチスミコ]
1955年、福岡県生まれ。九州大学教育学部卒業
吉川聡子[ヨシカワサトコ]
1968年、北海道生まれ。北海道教育大学で日本画を学ぶ
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
扉のこちら側
80
2018年470冊め。名も知らぬホームレスをXと呼び、サンドイッチをわけてあげていた少女が非行の濡れ衣をかけられる。少女はアリバイを証明してくれるXを探しに家を飛び出すのがハイライト。元ストリッパーの母、自閉症の二人の弟達との生活保護の暮らしや学校でのいじめ等ありながら、夢を見ながら生きる少女の生活を応援したくなった。著者の本は4冊めだが、アフガン難民支援者として彼らの姿を描いているだけあり、自国カナダの貧困問題に関わる人々の描き方がうまいと思った。2018/08/09
riviere(りびえーる)
5
アメリカトロントに住む11歳の少女カイバー。彼女のおかあさんはストリッパー&シングルマザー。双子で自閉症の弟もいる。世間の偏見やいじわるにも負けずに自分を貫こうとするカイバーを助けてくれるのはなぞの友人X。ところでXって誰?結局謎が解明されないながらもなんとなくわかる最後が暖かい。アメリカでもシングルマザーはたいへんなんだなぁと考えさせられた。2014/07/09
tomatobook
3
カナダの児童文学。タイトル通りXを探し出すのは物語も5分の4を過ぎてから。それまでは主人公の女の子カイバーの家族、生活環境についての描写。元ストリッパーのシングルマザーと自閉症の双子の弟と生活保護を受けながら暮らす。カイバーは時々見かけるホームレスをXと名付け、サンドイッチを差し出す。学校での濡れ衣を晴らすためXを探すのだが..結局見つからずXもさして重要な登場人物ではなく。ただ、カナダの貧困や生活保護の暮らしの実情はリアルに描かれているように感じた。2019/06/27
yumiha
2
もとストリッパーの母と自閉症の双子の弟と暮らすカイバーの周りには、偏見が渦巻いている。そして、カイバーは、そのひとつひとつと向き合い、闘い、傷つく。そして、生活保護の暮らしは楽ではないのに、ホームレスのXにサンドイッチを差し入れるカイバーの優しさ。しんどい状況を生きなければならないからこそ、真実が見えるのかもしれない。2010/01/25