内容説明
エレズは十三歳半、クラスの人気者で、テニスのチャンピオンをめざしている。父は大蔵省勤務、母はインテリアデザイナー、姉はピアニスト志望、はた目には申し分のない家庭だが、父親が暴力をふるう。母も姉も見て見ぬふりをする。「ぼくへの愛情からだ」とエレズは思おうとするが、父が怖くて憎い。その分、友だちにはワルぶってみせる。出口なしの状況を変えてくれたのは、新しく担任になったルティだった。そして、もうひとり…。実現しなかったゆめを、むすこにたくす、教育熱心な父。でも、期待は重荷となって…。
著者等紹介
アミット,ガリラ・ロンフェデル[Amit,Galila Ronfeder]
1949年イスラエル生まれ。エルサレムに住み、実子3人のほかに、崩壊したり問題のある家庭の子どもたちの里親になった経験を持つ。人気作家だが、週2回は子どもたちとの対話集会に出かけている。邦訳作品には、ほかに『心の国境をこえて』(さ・え・ら書房)『もちろん返事をまってます』(岩崎書店)がある
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感想・レビュー
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april-cat
2
主人公のエレズが頑張ったところが良かった。(小学生の作文みたい)どこから見ても完璧な家庭、テニスのスター選手で人気もののエレズ13歳。そんな彼の背中は父親から受けたベルトによる折檻で傷だらけだ。何も見てないふりをする母親、巻込まれたくない姉。巧妙に隠された真実は新任の先生ルティの登場で明るみにでるのか。DVものは一度読み始めてしまうと、最後まで読まないとモヤモヤするし、読み終えて、例えハッピーエンドになろうとも、結局心に棘がささったようにイライラが残る。暴力は「教育」を放棄することにほかならない。2013/04/23
Olga
1
エリートの父を持ち、裕福な家庭に暮らし、テニスの才能に恵まれているエレズは、実は父親からのDVに苦しんでいた。DV加害者は外面がいいこと、暴力をふるわれるのは自分が悪いからだと被害者が思い込んでしまうこと、家族が現実逃避することなど、DVにありがちな要素が詰まっている。原書の刊行は1995年、邦訳が出たのは2000年だが、今のほうがより身近に感じられるかもしれない。2019/04/05
kanamari
1
良かれと思って。そしてきっと喜ぶはず、今すぐじゃなくても、この子の未来にきっと繋がると。子もまたそれを十分感じる子が故に、苦しくなる。どうしようもなくなったとき、SOSが出せる子であって良かった。親子じゃなくても、こういうすれ違いって沢山日常である。だけど、分かり合えないのって身近な人であるほど悲しみが深いんだよね。2013/02/28
きゅうり
1
お父さんもお母さんも、昔は子どもだった。ってことに気付くと少し楽になるし優しくなれるね。。。2012/08/07