内容説明
誰もが考え、誰もが避けようとする配偶者の死。団塊世代に迫りくる身近な問題を元江戸川乱歩賞最終候補作家が実体験を通して鮮烈に描く。
目次
序章 その時―二〇〇九年七月六日
第1章 闘病―二〇〇九年六月二日から六月十二日まで。智子死去一カ月前
第2章 衰弱―二〇〇九年六月十六日から六月二十八日まで。智子死去二十日前
第3章 別離―二〇〇八年五月二十日から六月二十三日まで。智子死去一年二カ月前
第4章 再会―二〇〇八年十月二十六日から二〇〇九年五月二十二日まで。智子死去八カ月前
第5章 過去―一九七四年四月四日から一九九七年末まで。智子死去三十五年前
第6章 発症―二〇〇〇年四月十六日から二〇〇五年九月末まで。智子死去九年二カ月前
第7章 葬送―二〇〇九年七月七日。智子死去直後
終章 一周忌―二〇一〇年七月四日。智子死去一年後
著者等紹介
池上敏也[イケガミトシヤ]
1946年生まれ。東京大学薬学部卒業後に製薬会社勤務。1980年弁理士試験合格、登録。その後、仕事の傍ら小説創作に没頭し、1985年から三回江戸川乱歩賞最終候補。1993年、製薬会社退職、大阪で特許事務所を開業。20年間の事務所経営のあと、後輩に途を譲り実務を離れ会長職に就く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
クリママ
33
乳癌を患った妻を、夫一人、家庭で看取る。自身の体験をもとに書かれている。死や病は誰にでも訪れるものであり、生きてきた時間より、これからの時間が短くなった我が身には、辛く、切実な読書となる。逝く場所が病院であろうと家であろうと、無駄な延命がなければ、そして苦痛を取り除いてくれるならば、ただ、後に残る人が悔いのないようにしてほしいと思う。不満は2点。介護と看取り、どちらがより楽とは言い難いこと。病身の妻が娘に言われたとはいえ家を出るに至る夫への不満不信が、夫目線であるために描き切れていないところか。2016/10/11
アリ子
20
乳がんの骨転移とモルヒネの副作用に苦しみながら、急激に悪化していた1ヶ月。最期まで自宅で二人で過ごされた様から、なんと仲の良いご夫婦だろうかと感心したのだけど、実は離婚寸前だった過去もあり、私などは逆に救われました。2015/08/08
Yuko
3
「《最期に彼女のそばにいるのは医者ではなく私であるべきなのです》 誰もが考え、誰もが避けようとする配偶者の死。団塊世代に迫りくる身近な問題を、実体験を通して鮮烈に描く。」2014年の「ブルーベリー作戦、成功す」が良かったので、その前年の作品を手に取った。病院で延命措置を受けチューブに繋がれて最期を迎えるのではなく、自宅で夫に看取られて逝った奥さんは幸せだったろう。在宅ケアスタッフとの協力や病院との連携など、書かれていない部分で大変なことはたくさんあっただろうけど、奥さんの意志を尊重してあげられて良かった。2015/01/22
寿里子
3
私がこの死んでいく妻であったら、看取る夫の立場であったら・・・と一行一行自分に置き換えて読んだ。そうやって読むとなかなかハードな中身でした。夫にも読んでもらおうと思う。2014/09/27
キヌモ
3
実際に、妻を自宅で看取った人のお話です。仕事にかまけて家族をないがしろにしていた夫のきづきというか、頑張りがいいです。癌を患った妻の癌と闘う気持ちもスゴいです。実際、家族が癌になったら、果たしてどういうふうに、自分が行動するか、考えさせられた1冊です。娘さんとの葛藤もわかります。 2014/08/30