内容説明
作者没後28年なお不動の人気を誇る国民的漫画、アニメの『サザエさん』。だが、15歳で天才少女としてデビューし、72歳で亡くなる5年前まで描き続けた長谷川町子とその家族のことは意外なほど知られていない。戦後の荒廃から日本が怒涛の成長を遂げた時期に『サザエさん』出版を家業として姉妹社を立ち上げた一家は、磯野家の人々とはおよそ真逆の愛憎、かけひき、確執が充満する空間を生きる。度肝を抜く額の収入、家族の不和と崩壊、自伝に書かれた虚―これらをひた隠した長谷川家の三姉妹の、苛烈な人生の光と闇を描いた評伝。
目次
第1章 盗まれた遺骨
第2章 長谷川家の命運
第3章 天才少女漫画家
第4章 戦時下の恋
第5章 「サザエさん」連載開始
第6章 復興期の「サザエさん」第7章 嫉妬と羨望
第8章 巨万の富
第9章 町子の「家出」
第10章 「サザエさん」訴訟事件
第11章 家族崩壊
第12章 長谷川家の光と影
著者等紹介
工藤美代子[クドウミヨコ]
1950年東京生まれ。91年、『工藤写真館の昭和』で講談社ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
69
『磯野家の謎』もおもしろかったが、マンガの内部に集中して、徹底的に掘り下げることが目的だったので、本書とはコンセプトが異なる。作者自身について詳しく書いた本は、『サザエさんうちあけ話』以外に読んだことがなかったが、いろんな点で語られない事情も多かったようだ。生誕100年の伝記が、みごとに昭和史と並行する。サザエさんの作者はやはりすごい人で、登場する有名男性マンガ家もかすんでしまうと感じた。作者と主人公を同一視してしまうのは、ありがちな誤謬だが、磯野家は作者にとって、理想の家庭像だったのかもしれない。2020/06/24
きみたけ
44
長谷川町子さんの生涯とまつわる長谷川家についてのお話でした。どうしてもサザエさんイコール町子さんと思い、どこか似ているのだろうと考えていましたが、実際の足跡をたどってみると波瀾万丈の人生を歩んできたことがわかりました。ひとつの大きなドラマを観るような感じで面白かったです。2020/08/19
Kepeta
25
幼少時から姉妹社版サザエさんを愛読し、その他長谷川町子の漫画や妹の洋子さんの著書も読んだ身としては、やはり最大の関心は晩年の姉妹間の確執の謎なんですよね。長谷川家は町子を売り出す為のチームと見抜き「三姉妹のどの言い分も鵜呑みにするべきではない」というのはフェアな視点ではあるのですが、もう少しキッチリ調べて踏み込んでもらいたかったです。残念ながら「サザエさん打ち明け話」と「サザエさんの東京物語」から得られる以上の情報はない感じでした。関係が濃すぎる女系家族に莫大な金銭が絡んだという複合的要因な気はしますね。2023/12/13
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
23
女性漫画家の先駆け。お母さんが強過ぎる!家族経営ならではのゴタゴタ。偉大な漫画家と暮らすのは大変だろう。『サザエさんうちあけ話』で語られた話の表には出さない長谷川家の顔。2023/03/05
kei-zu
19
「萩尾望都と竹宮恵子」が面白かったので、著者は違うが同じ新書から刊行の本書に手を伸ばしました。 本書で決して好意的に書かれているのは言えない「サザエさん」の作者の暮らし向きは、漫画を読んでいて若干は感じるものがありました。 一般の日本人に馴染みのないキリスト教の描写が描写が少なくないしね。 それでも、であるからこそ客観的に「庶民の暮らし」を描けたのではないかと思う。対人関係も大変だったようですが、まあ、創造者ですし。 長谷川町子美術館もサザエさん関係が増設されたと聞きます。折を見て行かねば。2021/03/03