内容説明
「不謹慎だ!」「間違っている!」「その人の身になってみろ!」―自分は「善いこと」をしていると思って発するこれらの言葉。しかしその正体は、自分と異なる意見を否定し、相手も自分と同じように感じるべきだという押しつけにほかならない。なぜ善意は暴走して人々の自由を抑圧するのか?「許せない」「かわいそう」など、人々が「感情」で動く社会はなぜ危ないのか?気鋭の政治社会学者が、現代の病理を社会システムと個人の心性の両面から鋭く分析し、変革のための方法と理念を提示する。
目次
第1章 善意が暴走する時代
第2章 「共感」という危険な感情
第3章 依存症と官僚制
第4章 承認欲求の行き着く果て
第5章 人はなぜ陰謀論にはまるのか
第6章 あなたが世界に変えられる前に
著者等紹介
堀内進之介[ホリウチシンノスケ]
1977年生まれ。政治社会学者。博士(社会学)。専門は政治社会学、批判理論。首都大学東京客員研究員、埼玉大学非常勤講師、現代位相研究所首席研究員、Screenless Media Lab.所長ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aloha0307
27
表題の 善意 とは、本来の”相手に善かれ”という思いやり ではなく、発するその人が自分は「善いこと」をしている思っている ところが違うことに留意が必要です。冒頭 確かに、本当は一度も自分の顔を直に見たことはない 「自分と相手とは違う」は自明なのに、それを忘れてしまうのだね。共感 という感情の負の側面にはドキッとしました。コストをかけてまで相手を罰したい心理 の項は、会社を思い出してしまい辛かった...but「徳は孤ならず必ず隣あり」 の終章に救われた思いです✿2020/01/12
まゆまゆ
18
正義に反する行動へのバッシングは、共感がもととなっている。被害者となってしまった人への寄り添いが語られる一方で現状は改善されないため、共感だけが過激化し自己目的と化する。そういった行動をとる人のほとんどは分かってやっているため、本来なら依存症への対応として行うべき……なのか。善意だけが暴走していて社会が変わらない時代に、私たちはどう振る舞えばいいのか……答えは出ない。2020/01/21
ophiuchi
14
哲学的な題名が示すように、ちょっと難解だった。有名人のSNSなどでの言動をとがめる「不謹慎厨」という言葉は知らなかったが、ますます暴力的になっている。どんどん息苦しくなっていく社会の流れが変わる日は来るのだろうか?2020/01/09
kan
8
現代社会における認知バイアスと、その発生背景に切り込む内容を期待したのだが、実際の内容は、「共感」をキーワードに、現代社会での人間の暴走や洗脳、無自覚に情報技術に絡め取られる意思を概観するもの。テーマがあちこちに飛んで核心を掴みきれなかったのが残念。もう一度読めば理解できるのだろうか…?2021/04/16
hiyu
7
主張自体は理解できる。だが、多分とは価値観が異なるのだろう。社会総体としての見方、方向性とするのは理解できないわけではない。だが、もう少し人の心情に話を向けても良いのではないか、そう思えてならなかった。「善意」以外にも表現方法はあるはずだから。2020/06/30