内容説明
悲観とは「物事は予測や予定どおりには運ばない」と考えること。本書で伝えたいのは、この「思わぬこと」に対する考察の重要性だ。重大な過ちを繰り返すことへの歯止めは悲観することしかない。「機械は必ず壊れる」「人間は必ず誤操作する」という工学の設計には当たり前のフェールセーフの思想が、人間の心理や感情には決定的に不足している。エラーの想定が不充分なのだ。もちろん単なる心配や諦めは悲観ではない。「これでは駄目かもしれない」と思ったら次にどう対策するのか。豊かな社会ゆえの楽観を排し、有効な悲観の技術を伝授する。
目次
第1章 心配性で助かった
第2章 あまりにも楽観的な人々
第3章 正面から積極的に悲観する
第4章 冷静な対処は悲観から生まれる
第5章 過去を楽観し、未来を悲観する
第6章 期待と願望はほとんど意味がない
第7章 悲観できなくなるまで準備する
著者等紹介
森博嗣[モリヒロシ]
1957年、愛知県生まれ。作家、工学博士。国立N大学工学部建築学科で研究する傍ら96年に『すべてがFになる』で第一回メフィスト賞を受賞し、作家デビュー。以後、次々と作品を発表し人気作家として不動の地位を築く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
180
楽観から来る挫折感。頑張っても挑戦は失敗し、願いは簡単に叶わない経験をして、原因と解決策を考えるようになる。…期待や願望は「楽観」の原動力であるが、冷静な判断の邪魔をする。「悲観」は嫌われる。悪い印象を抱くのは、集団が楽観の空気で結束しているから。しかしあらかじめ悲観的に考えれば咄嗟の対応ができる。人は未経験や未知に対して過剰反応する。人間関係や災害等にも有効であり自らを成長させる。…人間には楽観も必要であるが、充分な悲観を経てから願えばいい。悲観力を持ち合わせている人は、あなたの気持ちを分かってくれる。2021/10/13
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
114
「悲観的」というとマイナスのイメージだが、彼がいう「悲観する力」はむしろ危険予知やリスク回避のこと。世の中うまくいくことの方が少ないし、絶対は無いからそれに備える力は必要だ。メーカー勤めが長いので、「安全係数」だの、「フェイルセーフ」だの「コンティンジェンシープラン」という考え方は日常茶飯事だ。特に目新しいことが書いてあるわけではないが、森さんの意見にはうなずくことが多い。とは言え「悲観的」ばかりでも良くはないわけで、最後は「大丈夫」という気持ちも大切。「人事を尽くして天命を待つ」が理想だと思う。★★★+2019/03/09
佐島楓
75
私もおおむね森先生と同じような思考法で生きている。「悲観」とするとことばが強すぎるかな。物事のリスクを見通して行動するということ。歳を取って責任が増えてくればおのずとこういう思考体系になるのでは。2019/01/31
かめりあうさぎ
55
「悲観」と聞いて普通思い浮かべるネガティブなイメージとは全く違った。理性の楽観・悲観と、感情の楽観・悲観とは正反対であり、本書の悲観とは理性の悲観のことを指しています。この発想が私にはなかったので非常に斬新だった。また、悲観から生まれる思考にも重きを置き、死ぬまで考え続けることが大切だと話している。その為の読書術や作文の方法などは実用的だと感じた。また、この本を鵜呑みにすることも良しとせず、他にも色々読んで自分で考えることが大切としている。一読の価値あり。2019/03/12
こも 旧柏バカ一代
48
森博嗣氏の悲観に関する考えが書いてあった。今の日本は元々縁起の悪い事を言わない文化もあって楽観過ぎるそうだ。楽観の根底には期待と願望があるらしい。楽観は考えてないだけで、悲観しながら、その回避を考え準備をする。でもそこに願望が入るとよく外れる。悲観するのも難しい。AIについては悲観されてないらしい。そこは同意。2020/04/28