内容説明
世界最短の詩文学・俳句は同時に世界最恐の文芸形式でもあります。日常を侵犯・異化するなにか、未知なるものとの遭遇、人間性そのもの…作品の中心にある怖さはそれぞれですが、どれも短いがゆえに言葉が心の深く暗い部分にまで響きます。一句二句、暗唱して秘められた世界に浸ってみてください。不思議なことに、そこはかとない恐怖がやがてある種の感動へと変わるはずです。数々のホラー小説を手がけ、また俳人でもある著者が、芭蕉から現代までたどった傑作アンソロジー。
目次
第1章 芭蕉から子規まで
第2章 虚子からホトトギス系、人間探求派まで
第3章 戦前新興俳句系
第4章 実存観念系とその周辺(伝統俳句、文人俳句を含む)
第5章 戦後前衛俳句系
第6章 女流俳句
第7章 自由律と現代川柳
第8章 昭和生まれの俳人(戦前)
第9章 昭和生まれの俳人(戦後)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
76
芭蕉から現代まで、怖い俳句が並べられている。短い言葉の先に見える異世界や死の影。短いからその先を想像してしまう。映像を思い浮かべてしまう。こういう俳句の世界もあったんだな。2021/04/20
kinkin
70
俳句、ほとんど知らない世界だけにタイトルに惹かれて読んだ、世界最短の詩といわれる俳句を通して不安や怖さといったことを表す面白さを知ることができた。五・七・五の言葉の前後に自分の気持ちや感じたことを付け加えるとその面白さがグンと増すと思う。「月涼し百足の落る枕もと」、「狐火や髑髏に雨のたまる夜に」、「稲妻に道きく女はだしかな」他にも状況をイメージするとゾッとする句がこの本には詰まっている。著者も書いているように反応は読み手によって違う、解説は読まずにまず句だけを読み通してみた。 2016/01/08
sin
62
タイトルは“怖い俳句”と或り選者が自ら「俳句は世界最恐の文学形式」と云うが、選ばれた多くの俳句は直截に“怖い”ではなく怖さを仄めかし想像に訴えかけてくるようだ。或意味、怖さは感じ方次第に思えるが選者は一歩踏み込んで解釈し、その観念的な不気味が選者の解説で怖さに塗り込められていく…選者の心象風景が“怖い”を招き入れているようにも感じる。自分のような素人は怖いこわいの作法を守って俳句に含まれた怖さを理解していくのが正しいのだろう?2023/07/21
メタボン
44
☆☆☆★ 怖い感覚が一番伝わるのは俳句という文芸。私はじわじわとくる怖さが好き。「月涼し百足の落る枕もと・槐本之道」「囀りやピアノの上の薄埃・島村元」「戦争が廊下の奥に立つてゐた・渡邊白泉」「捨てられた人形がみせたからくり・住宅顕信」「いっせいに死者が見ている大花火・山崎十生」「春の家闇のどこかで「ママ、起きて」・高澤晶子」。それにしても良くこれだけ怖い俳句を集めたものだ。 2016/04/08
傘緑
42
なんとも編者らしい趣向の恐作集wたぶん収録句のどれを怖いと感じるかで、その人の人間性が垣間見える気がする。私が怖いと感じた句は、「流燈や一つにはかにさかのぼる(飯田蛇笏)」「死にければ闇たちこむる蛍籠(山口誓子)」「獣脂の蛆如何に如何にと口を挙ぐ(中村草田男)」「太陽や人死に絶えし鳥世界(高屋窓秋)」「うつうつと死姦に入りし黒揚羽(加藤かけい)」「月天心まだ首だけがみつからず(真鍋呉夫)」「目と鼻をまだいただいておりません(広瀬ちえみ)」「ゆくりなく/逢魔が時の/笛/太鼓(林桂)」私は総じて蟲が苦手ですw2016/11/21