内容説明
何歳まで生きれば“ほどほどに”生きたことになるのか?長寿をもてはやし抗加齢に踊る一方で、日本人は平均で男6.1年、女7.6年間の寝たきり生活を送る。多くの人にとって長生きは苦しい。人の寿命は不公平である。だが「寿命を大切に生きる」ことは単なる長寿とはちがうはずだ。どうすれば満足な死を得られるか。元気なうちにさがしておく「死ぬのにうってつけの時」とは何か。数々の老人の死を看取ってきた現役医師による“死に時”のすすめ。
目次
第1章 長生きは苦しいらしい
第2章 現代の「不老不死」考
第3章 長寿の危険に備えていますか
第4章 老後に安住の地はあるのか
第5章 敬老精神の復活は可能か
第6章 健康な老人にも必要な安楽死
第7章 死をサポートする医療へ
第8章 死に時のすすめ
著者等紹介
久坂部羊[クサカベヨウ]
医師・作家。1955年、大阪府生まれ。大阪大学医学部卒業。2003年、小説『廃用身』(幻冬舎文庫)でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nyaoko
65
ドラマ「無痛」「破裂」で知った久坂部羊さん。現役の医師で老人の看取りを行ってきた経験を元に書かれている為、書店で見つけて即買い。ああ先生、全くもってその通りです。老化と、死と向き合えない弱い人間が多すぎる。老いた体を認められない老人とその子供達。仕事柄、介護が必要な老人とその家族に関わっているので、どの言葉も深く残るし、全面的に支持したいと思う。動けなくなり、食べられなくなり、段々と弱って静かに静かに死んでいく事がそんなに悪いの?長生き美徳の風潮に踊らされている日本人に警鐘を鳴らしていってほしい。2016/01/16
チャーリブ
61
ギクッとする題名。初版が2007年ですから15年ほど前の作品です。同じ著者の『人はどう死ぬのか』のほうが、より現状に近いデータでしょうが、内容はそれほど違いません。高齢になって人はどのように死んでいくのか、あるいは死ぬべきかという、かなり気の重くなる内容です。本書が書かれたときには著者はまだ在宅医療専門のクリニックに勤務しており、末期がんの訪問医療などを行っていたので、「臨場感」という意味では本書のほうが勝っています。医療に対する見方も変わります。○2022/10/19
団塊シニア
57
医療が発展したせいで患者は自然な形で死ねない、無理やり生かされるようになった、苦しみながらも死ねない患者や老人の声は圧殺され世間に伝わらない、医師としての立場から現代の医療にたいする問題提起は共感できる。2015/07/09
carl
54
先ず感じたのは、筆者の「神の手」のベースになっている思想やアイディア集の様に思った。テーマは結局終末医療のあり方なんだと思いますが・・私は今まで自分の最後を冗談の様に想像したこと(希望も含めて)勿論あるが、この本を読んでチョット心に変化が出始めました。面白かった。好きな事好きなだけ楽しもう。2017/07/26
KEI
53
訪問医療などを通して多くの老人を看取ってきた医師として、現在の長寿は良いことだという風潮や抗加齢医療などへの警鐘を鳴らす。天寿を全うする事と長寿は違うこと、やたらな延命治療は死に臨んだ人の苦しみを長引かせるものだとの説には全く同感だった。 私も還暦を過ぎた時から、がん検診はあえて受ける事を辞めている。より安らかな死を迎える為には、抗わず心穏やかに迎えたいものだと思った。2018/07/18