出版社内容情報
正しい知識が腎臓を守るいちばんの処方箋
薬物療法・食事療法・運動療法でQOLを高める!
慢性腎臓病(CKD)は、日本の成人のおよそ5人に1人が抱えているとされ、「新たな国民病」と位置付けられています。糖尿病や高血圧、肥満、加齢など、いくつもの要因が重なり合うことで腎機能は少しずつ低下していきます。しかし症状が現れにくいため発見が遅れ、気づいたときには人工透析や腎移植以外に選択肢がなくなる場合も少なくありません。
著者は国立病院での腎臓内科医としての経験を経て、2005年にクリニックを開業。以来、患者に長く寄り添う診療スタイルを貫き、診察だけでなく、食事療法を学べる料理教室や理学療法士による運動指導など、生活全体を支える実践的な取り組みを続けてきました。
さらに近年は、薬物療法や生活指導、チーム医療の進歩が加わり、治療の選択肢はより広がっています。こうした環境の変化と著者の実践が相まって慢性腎臓病と診断されても、早期から前向きに取り組むことで病気と共生しながら明るい未来を描くことが可能になってきました。
本書では、CKDの基礎知識から薬物療法・食事療法・運動療法の実際、さらに病院選びのポイントまで、著者の臨床経験と独自の工夫を惜しみなく紹介します。CKDと診断された方や腎機能の低下に不安を抱える方、そして患者を支える家族や医療従事者にとって、本書は必携の一冊です。
腎臓を守るために「今できること」を知り、実行する――その第一歩を力強く後押しします。
【目次】
まえがき
【Chapter 1】成人の5人に1人が患う国民病「慢性腎臓病」
腎機能の低下はQOLに大きな影響を及ぼす
慢性腎臓病は成人の5人に1人が患う国民病
身体を健康な状態に保つ腎臓の大きな役割
腎臓病と診断されても治療せずに放置すると
治療の中断は命とりになる
CKD治療の基本は薬・食事・運動・生活習慣
【Chapter 2】腎機能の状態はeGFRの数値と症状から分かる!
自身のステージを知ることが正しい治療への第一歩
2-1 数値から自分の腎臓の状態を知る
腎臓病かどうかはどうすれば分かるのか
シスタチンCによるeGFRにも注目
蛋白尿は最重要
2-2 CKDの重症度を決める「GFR区分」と「蛋白尿区分」
CKDの重症度を決めるものは
① eGFR60以上、尿蛋白正常(-):「G1・A1」「G2・A1」
② eGFR60以上、軽度蛋白尿(±):「G1・A2」「G2・A2」
③ eGFR60以上、高度蛋白尿(+以上):「G1・A3」「G2・A3」
④ eGFR45~59、尿蛋白正常(-):「G3a・A1」
⑤ eGFR45~59、軽度(±)から高度蛋白尿(+以上):
「G3a・A2」「G3a・A3」
⑥ eGFR30~44、尿蛋白正常(-):「G3b・A1」
⑦ eGFR30~44、軽度(±)から高度尿蛋白(+以上):
「G3b・A2」「G3b・A3」
⑧ eGFR15~29、尿蛋白正常(-):「G4・A1」
⑨ eGFR15~29、軽度(±)から高度蛋白尿(+):
「G4・A2」「G4・A3」
⑩ eGFR15未満:「G5・A1」「G5・A2」「G5・A3」
進行スピードや治療効果が分かる「eGFRスロープ」
【Chapter 3】めざましい発展を見せる薬物療法で腎機能の低下を抑制する
個々人に最適な薬を選び、病気の進行速度を落とす
3-1 原疾患とCKDの治療で腎機能の低下を抑制
主な原疾患① 糖尿病関連腎臓病(DKD:Diabetic Kidney Disease)
主な原疾患② 腎硬化症
主な原疾患③ 慢性糸球体腎炎
主な原疾患④ 多発性嚢胞腎
主な原疾患⑤ 急速進行性糸球体腎炎
主な原疾患⑥ ループス腎炎
3-2 CKDの薬物療法はどんどん進歩している
糖尿病関連腎臓病治療に使われる4つの薬(4本柱)
CKDの薬物療法開始は早いに越したことはない
CKDの薬物療法の流れ
3-3 腎機能の低下を抑制するための治療薬
ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)とACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)
SGLT2阻害薬
GLP-1受容体作動薬
降圧効果を高めて腎機能低下抑制を補助する薬<