内容説明
小さな頃からずっと、乃々山睦の好きな人は幼馴染みの来栖貴文。高校卒業間近になっても真っすぐそう主張する睦に友達は困ったように笑うが、何故なのか睦にはわからない。女の子とのキスを目にして、自分もしてほしいと懇願する睦に来栖は…。来栖が上京する春、会えないまま過ぎてゆく月日、そして―。書き下ろしも収録し、待望の文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
miyu
42
"お願い事を叶える券"を大好きなクルちゃんに渡した18の睦に涙したが、故郷に戻る睦を引き留めるため大人になった来栖がなりふり構わずボロボロの券を出すシーンも胸熱。挫折する前は順風満帆だった優秀な彼が叶う券を捨てず(捨てられず)に持っていた。つまりこれは実は来栖の物語なのか。『お絵かき、あお色のクレヨン、蒸したプリンに甘い卵焼き。ふかふかのタオルにレイダーマン人形。いっぱい並べるものはある。好きなものは減ることがなく、睦の中で増える一方だった。たくさん長く生きているのだから、睦にとってそれは普通に思えた。』2018/10/04
ムック
25
ああ、これすごく好きだー!無垢な睦の何気ない言葉は駆け引きもなく、だからこそ本質のところを突いてくる。栗栖に置いていかれようと健気に想い続けている姿が切なかった〜。栗栖が将来の事を考えて自分の気持ちを中々認めず、睦を振り回す姿にはいらっとしたけど、ようやく気持ちが通じ合ってほっとした。睦も成長してちゃんと自分の思っている事を言えるようになってよかったなー。とてもあったかい物語でした☆2011/02/03
ちびのすけ@灯れ松明の火
19
再読本。ファンタスマゴリアからレイダーマン繋がりできました。甘いだけじゃなくて睦の苦労とかクルちゃんの足掻きとか可愛いけど切なくてちょっと辛い匙加減が絶妙ですね!睦の発達障害に向き合う友達もいい人だけど、そういう人ばかりじゃないし…。睦の粘り勝ちです。お母さんたちが素敵でした。2013/05/02
たまこ
17
最後は、睦が「クルちゃん」と呼ぶ度に切なく なり苦しかったです。来栖が自分の気持ちに自己嫌悪し、苦悩する様は胸が締め付けられるようでした。なぜ睦じゃないといけないのか?自分自身が純粋でありたいという願い、自分を見失いそうな時に側にいて欲しい存在。自分と睦の気持ちが通い合っても、これから先もきっと来栖は悩んだり、葛藤したりするんだろうな。二人が穏やかに幸せであって欲しいと、願わずにはいられません。2012/06/25
さち
17
終始心を掴まれ何度も泣いた。来栖は傷付けるのも傷付くのも恐くて睦から逃げ、いろんなものを切り捨てて生きてきた。でも再会し、睦の純粋で無垢でまっすぐな想いが来栖に大切なものを気付かせる。決して遠回りは無駄ではなかったんだよね、その睦のひたむきさが切ないけどとても愛おしい。8年離れてわかったこと、変化したものしなかったもの、そしてこれから…読んでいて自分自身にも投影してしまう。大事なのは睦といると自分が変われること…その言葉が心に染みる。胸がいっぱいで上手く言えないけどたくさんの人に読んでほしいと思う。2010/05/20