出版社内容情報
死んでしまいたいと思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(「健やかな論理」)尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が写されているような気がした。(「そんなの痛いに決まってる」)生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。(「籤」)等鬱屈を抱え生きぬく人々の姿を活写した、心が疼く全六編。
内容説明
死んでしまいたいと思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(「健やかな論理」)尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が写されているような気がした。(「そんなの痛いに決まってる」)生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。(「籤」)等鬱屈を抱え生きぬく人々の姿を活写した、心が疼く全六編。
著者等紹介
朝井リョウ[アサイリョウ]
1989年、岐阜県生まれ。小説家。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。13年『何者』で第148回直木賞、14年『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞、21年『正欲』で第34回柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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ゼロ
95
健やかな論理。祐布子が唯一安心感を得られるのは、死亡者のSNSアカウントを特定できた時。流転。妻の妊娠を口実に夢を諦め、仕事に邁進する豊川。だが仕事に誇りを見出せず現実が。七分二十四秒目へ。正社員からアルバイト。依里子は人の雇用形態を想像する。風が吹いたとて。異動後、痩せていく夫への心配と苛立ちを等分に抱えた由布子。突如吹っ切れる。そんなの痛いに決まってる。良大は妻の収入が自分を上回った瞬間、妻に対しては勃起不可。セフレへ。籤。みのりはある夜夫と喧嘩になった。原因は、胎児の出生前診断をめぐる意見の相違。2025/06/22
ゆいまある
85
短編集。嫌なことは日々ある。収入の為にやりたくもない仕事に就き、売りたくもないものを売る。ウザイの一言でしか表現できないさざ波のようなものを言語化し可視化し、共感を得る物語に持っていける朝井リョウ。むしろ事件が起きないほうが、この人の描写力に気づく。例えばスキンケアした後の顔とか手とか触られたくないとか、女性固有のしんどさ、なんでリアルに書けるのかな。監修してる女性がいるのか、それとも朝井2人いるとか。巻末で万城目さんも言ってるけどやっぱ本物。「そんなの痛いに決まってる」が特に好き。KU2025/07/10
みこ
85
肛門に蓋をすることが苦手な作者が現代人の心には一切の蓋もせずに闇を暴き出す6編の短編小説。もうこんなふざけた書き出しをするしかないくらいに読後感は深くどんよりしている。作中人物が「人間の醜さを絞り出すことが正直さと褒めそやされるのは暗転のある舞台の上だけ。現実はそうではない」と語るが、まさにどの作品も主人公が闇に突き落とされ、暗転で終わるバッドエンドではなく、どこまでも続く闇の中に居ることを自覚して終わるバッドエンド以上のバッドエンドであった。2022/01/08
toshi
74
2019年の短編集。朝井氏のファンなので、この本を手に取りました。本作でも朝井氏の筆致はキレキレで、読書の心をある意味ズタズタに切り裂いて行きます。でもそれが何故か心地好く、病みつきになります。今までの作品ですと、割りと若い人が主人公となっておりましたが、本作では中年の悩める男女が主役となっており、シンパシーを感じました。一番気に入ったのはラストを飾る「籤」です。ままならない人生の行路にどう対峙していくが切々と描かれています。2025/02/16
ニカ
74
どの話しも、心に来るものがある。「籖」は本当に共感。きちんと終わりがある話しではなく、結局それぞれの主人公は、明日も変わらない毎日を生きていかなければいけないのがリアル。2024/06/07