出版社内容情報
死んでしまいたいと思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(「健やかな論理」)尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が写されているような気がした。(「そんなの痛いに決まってる」)生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。(「籤」)等鬱屈を抱え生きぬく人々の姿を活写した、心が疼く全六編。
内容説明
死んでしまいたいと思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(「健やかな論理」)尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が写されているような気がした。(「そんなの痛いに決まってる」)生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。(「籤」)等鬱屈を抱え生きぬく人々の姿を活写した、心が疼く全六編。
著者等紹介
朝井リョウ[アサイリョウ]
1989年、岐阜県生まれ。小説家。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。13年『何者』で第148回直木賞、14年『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞、21年『正欲』で第34回柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みこ
85
肛門に蓋をすることが苦手な作者が現代人の心には一切の蓋もせずに闇を暴き出す6編の短編小説。もうこんなふざけた書き出しをするしかないくらいに読後感は深くどんよりしている。作中人物が「人間の醜さを絞り出すことが正直さと褒めそやされるのは暗転のある舞台の上だけ。現実はそうではない」と語るが、まさにどの作品も主人公が闇に突き落とされ、暗転で終わるバッドエンドではなく、どこまでも続く闇の中に居ることを自覚して終わるバッドエンド以上のバッドエンドであった。2022/01/08
toshi
73
2019年の短編集。朝井氏のファンなので、この本を手に取りました。本作でも朝井氏の筆致はキレキレで、読書の心をある意味ズタズタに切り裂いて行きます。でもそれが何故か心地好く、病みつきになります。今までの作品ですと、割りと若い人が主人公となっておりましたが、本作では中年の悩める男女が主役となっており、シンパシーを感じました。一番気に入ったのはラストを飾る「籤」です。ままならない人生の行路にどう対峙していくが切々と描かれています。2025/02/16
konoha
73
すごい文章書くなぁ。現代人を朝井さんにしか書けない角度から切り取る6編。冒頭の「健やかな論理」からドキドキする。最初の設定を信じていると、社会派ミステリーのように裏切られる。女性の書き方が絶妙。「風が吹いたとて」は夫、息子、娘のいる主婦の奇妙な冷静さがリアル。後半に行くにつれ、こういうことありそう、こういう人いそうという感じが増していく。すごく痛くて抉られるのに、サービス精神にあふれる朝井さんはエンタメとして完成させてくる。人が抱える問題と本性、その暴き方が怖いほど上手い。万城目さんの解説も素晴らしい。2022/01/24
佐島楓
66
この小説を10年後読み返して、「このころのほうがましだったな」とつぶやく未来が来ませんように。2021/12/24
yukaring
64
この世の生きずらさを切に感じさせる、心がズキズキと疼くような6つのストーリー。健やかな論理だけでは成立しない人生に派遣社員の心の底の澱、会社の利益のために不正に目をつぶるサラリーマンの良心の葛藤、尊敬する上司のスキャンダルから本当の痛みの在り処を知る男性、生まれたときからハズレくじを引かされているような敗北感を感じる女性、と絶望感と紙一重でなんとかそれでも生きている人々の日常。『絶望と幸せ』の差とは何なのか考えて鬱屈としてしまうので気力が充実している時でないと読むのがかなりキツイかも。2022/09/30
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