出版社内容情報
後ほど
内容説明
昭和二十年、終戦間際の北海道・室蘭。逼迫した戦況を一変させるという陸軍の軍事機密をめぐり、軍需工場の関係者が次々と毒殺される。アイヌ出身の特高刑事・日崎八尋は「拷問王」の異名を持つ先輩刑事の三影らとともに捜査に加わるが、事件の背後で暗躍する者たちに翻弄されていく―。真の「国賊」は誰なのか?かつてない「戦中」警察小説!第21回大藪春彦賞&第72回日本推理作家協会賞ダブル受賞!
著者等紹介
葉真中顕[ハマナカアキ]
1976年東京都生まれ。「ロスト・ケア」で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、2013年に作家デビュー。『凍てつく太陽』にて第21回大藪春彦賞および第72回日本推理作家協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
320
終戦間際の北海道が舞台。太平洋戦争時、朝鮮や中国辺りから捕虜同然に連れてきた人たちに強いた皇国臣民制!言葉や文化、本名さえ奪われる。蔓延る差別は尋常じゃない。特高警察の主人公八尋も、御国のため懸命に働くが、アイヌというだけで『土人』扱い、きな臭い殺人事件の犯人にでっち上げられ網走刑務所に。役人・憲兵・特高警察という魑魅魍魎たちの傲慢にして身勝手な言動、戦況を覆す謎の兵器開発。相次ぐ軍事機密に纏わる不可解な殺人事件、杳として行方の分からぬ容疑者と女!盛り沢山で大ドンデンのジェットコースターストーリー‼️🙇2020/08/25
イアン
142
★★★★★★★★★★ミステリ二冠に輝いた葉真中顕の長編。アイヌをルーツに持つ特高刑事・日崎八尋は、身に覚えのない連続毒殺事件で投獄される。殺害現場に残された血文字。その裏には〝カンナカムイ〟と呼ばれる軍事機密があった…。謎の暗殺者・スルクとは何者なのか。室蘭に昇る第3の太陽とは。650ページを超える長編だが、潜入捜査、連続殺人、脱獄、軍事機密の追及と目まぐるしくフェーズが切り替わるため、冗長さを全く感じさせない。それでいてミステリとしての意外性も併せ持つ傑作。八尋の正義感を象徴するようなラストが実に粋だ。2024/03/06
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
141
葉真中さん初読みですが、なかなか読み応えあり。終戦間際の根室を舞台に、「特高」として活動するアイヌの男の姿を描く。潜伏捜査から拷問、逃亡、軍部と金…。展開も早くエンタメ要素てんこ盛りだが、著者の作風なのだろうかそこそこ重めの筆致で上滑ることもなくじっくり読ませてくれる。何が起こるか分からない結末に向けて、そこに至る経過を楽しむ作品だと思う。嫌いな作風ではない。他の作品も読まなくちゃ。2020/11/28
H!deking
102
ぐお、めちゃくちゃ面白かった!待ちに待った文庫化です。今年の暫定ベストテン入り決定。舞台は終戦間際の北海道・室蘭。ここで起こる殺人事件。冤罪で逮捕された特高刑事の八尋。どうするの?どうなるの?的なお話。ヤバいですこれは。何を書いてもネタバレになるので、ぜひ読んでください!やっぱり葉真中さんすげーっす。おすすめ!2020/08/26
となりのトウシロウ
95
舞台は敗戦の色が濃厚になってきた終戦直前の北海道。主人公はアイヌの血を引く日崎八尋で特高警察の刑事である。物語は八尋が室蘭の鉄鋼工場の朝鮮人労働者の飯場への潜入捜査から始まる。その後、その工場の幹部2人が殺害される。ミステリー小説かと思えば、重厚な冒険小説でもあって、エンターテイメントな要素がこれでもかとふんだんに盛り込まれており、最初から最後まで一気に読ませる。アイヌの同化政策や皇民化政策だけでなく大和人も絶対的なものだと信じた国家に裏切られる姿が描かれる社会派小説でもある。これはお薦めです。2025/05/18
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