内容説明
笑子が神戸で被災した日、母親は若い親戚の男・兵吾と寝ていた。男に狂った母、知らぬ顔の父、引きこもりの兄、職を失った自分―。悲惨な現実から逃げるように、笑子は結婚し東京へ。しかし子供ができず、家庭にも確かな居場所を作れない。そんな中、兵吾と再会。日常に背を向けて情交に溺れてゆく二人を3・11の激震が襲う。生き場なき女の物語。
著者等紹介
花房観音[ハナブサカンノン]
兵庫県生まれ。京都女子大学文学部教育学科中退。2010年、第一回団鬼六賞大賞を「花祀り」にて受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんごろ
156
阪神淡路大震災から東日本大震災までの泥沼と化した家族の物語。序盤からドロドロしてたけど、サクサクと読めて花房さんはこういうの書けるんだと思ったら、そこは花房さん、中盤から官能度が高まって、読むのがしんどくなってきて読むペースが落ちてしまった。やっぱり官能小説は苦手だ。物語としては、兵吾は置いといて、結局、笑子自身がわがままというか傲慢というか、ラストこうなるのはわかる気がする。2021/04/30
ともくん
45
寂しいから、人の温もりが欲しい。 寂しいから、セックスがしたい。 人は、寂しい時、誰かを求めてしまう。 男は、女に楔を打ち込むように、ただ何度も奥まで己を押し込んでいく。 そして、女は男をただ優しく包み込む。 男と女の寂しが繋がる。 それが、セックスなのだろう。2022/08/15
けい子
28
セックスだけ、体だけ求めて何が悪い?落ち着くから、安心するから、気持ちいいから、別にいいでしょ。どうして、そんな目で見る?悪く言うの?。自分の素直な気持ちのまま生きる女性の話。背景には阪神大震災、東日本大震災という大きな災害があり、いつ死ぬか分からない不安定な感情もプラスされ更に自分の思うままにセックスしたい相手とセックスするだけ。まっすぐ過ぎて無駄がない。嫌いじゃない。2020/03/10
納間田 圭
25
1.17…3.11…ふたつの大震災を経た📕震災本かと思って衝動買いしました。が…全く別次元の◯◯…いきなりのシーンは揺れ過ぎ。「私は泣いていた」…で始まる文章。神戸の時も…福島の時も…彼女は背に回す手を離さなかった。逃れないように爪を立て必死に隙間を無くそうとしていた。恋人でもなく、愛人でもなく、友達でもない……私の情人。未来などない瞬間だけだから…私が解放されるのはその時だけ。私は私の人生を自分で選択する。真面目な人は読まないでください。きっと揺れますから…ぐらぐらと2020/03/02
桜もち 太郎
18
これぞ花房観音といった作品。「セックスという血の因縁を持った親子に、自分の家族が取り込まれているようだ」、阪神淡路大震災の時に主人公笑子の母親は男の元にいた。16年後の東日本大震災の時、笑子も夫とは違う男の元にいた。その二人の相手になった男は血のつながらない親類の兵吾だ。性(セックス)とは何か、何のために存在するのか、人間の本能ともいえるが、笑子と兵吾のそれは堕落といってもいいのかもしれない。母親の歩いた道を自分も進むという因縁を感じた。そして笑子が馬鹿にしていた、兄新太の人生も目を引く。→2022/01/04