内容説明
戦後、日本が原子力の導入に邁進していた頃、大阪の商業地区に生まれた富士祥夫は東工大で原子核工学を専攻し、日本最大の電力会社に就職する。そこで彼を待ち受けていたのは無限の原子力エネルギーという理想ではなくトラブル続きの原発とコストカットの嵐が吹き荒れる本社、そして原子力という蜜に群がる政財官や裏社会の人間たちだった―。
著者等紹介
黒木亮[クロキリョウ]
1957年、北海道生まれ。カイロ・アメリカン大学大学院(中東研究科)修士。都市銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務し、国際協調融資やプロジェクト・ファイナンスを手がける。2000年、『トップ・レフト』で作家デビュー。早稲田大学時代には箱根駅伝に二回出場し、二〇キロで道路北海道記録を塗りかえた。1988年より英国在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あっ!chan
33
タイトルからも東日本大地震発災時の福島第1原発吉田所長が主人公の作品、ただ「死の淵を見た男」や「Fukushima 50」のような彼を英雄視した視点で描かれていないらしい。上巻は吉田の幼少期からまだ福一所長になるずっと前までの出来事(どこまでが事実かわからないけど)むしろ安全神話に振り回された東電を始めとした隠蔽体質(未だにその流れは変わっておらず最近も問題を起こしているが)等にページが割かれており(そのいくつかは私にも記憶がある)本当にこの国の原発大丈夫?と考えさせられてしまう。さて後半の展開は…2021/03/21
kawa
30
東日本大地震発災時の福島第1原発吉田所長の幼少からの人生を追うことを通して原発の問題点をえぐり出すおもむきの物語。安全神話のいいかげんさが随所に描かれつつ下巻へ。2021/05/14
さきん
26
吉田所長が主人公のモデル。大阪の幼少期から東電に入って所長になるまで。原子力に対する大いなる期待と、やがて、内包される危険性が地震や津波という発祥国アメリカとは違うものが見えてきて、それでもコストカットや石油資源に代わる巨大エネルギー源として安全面の強化が不十分なまま推進されていく状況。主人公も安全点検の中の事故の多さに幻想を吹き飛ばされていく。2021/09/25
モリータ
14
◆『週刊朝日』連載、単行本2015年刊、文庫2020年刊。東電福島第一原発と吉田昌郎をモデルにしたフィクション。原子力事業の背景とともに吉田の生い立ちから東電や電事連での仕事を辿っていく。コスト削減の波や(3.11以前の)福島第一原発等での原子力事故といった客観的事項も描写している。◆直接の関係者は変名または役職名のみ。「東北の坂本龍馬」=渡部恒三、宮田匠=二見常夫、小閑年春=武黒一郎(フェロー)、菅原正紀=武藤栄(副社長、原子力・立地本部長)、野尻隆=小森明生(常務、原子力・立地副本部長)2022/02/08
ヤギ郎
10
上巻。東日本大震災発生当時、福島第一原子力発電所で災害対応の最前線で指揮をしていた所長・吉田昌郎のドキュメンタリー小説。彼の子供時代を出発点に、原子力に興味を持って電力会社に就職した経緯が語られる。同時に、電力会社という巨大企業の中で、原子力発電所の建設の裏に繰り広げられた物語をみることができる。ある一人の男の生涯を追いかけているので、単調なところもあるが、緻密な取材に基づいたリアリティのある小説になっている。2022/05/04




