内容説明
国立大学の最高峰、天都大医学部の病院長・宇津々が謎の死を遂げた。自殺・謀殺説が囁かれる中、近く病院内で行われる新院長選挙。候補者は4教授。心臓至上主義の内科・徳富、内科嫌いの外科・大小路、収益の4割を稼ぐ眼科・百目鬼、改革派の整形外科・鴨下。誰が院長の座に?選挙運動真っ盛り、院長の死に疑問を持った警察が動き出した…。超エリート大学病院の医師たちの、序列と差別、傲慢と卑屈だけを描いた抱腹絶倒の医療小説!
著者等紹介
久坂部羊[クサカベヨウ]
大阪府生まれ。大阪大学医学部卒業。作家・医師。2003年、小説『廃用身』(幻冬舎)でデビュー。他の著書に『悪医』(第三回日本医療小説大賞受賞、朝日文庫)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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TERU’S本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
108
初読み作家。大学病院の権力闘争の舞台裏を描いた大作『白い巨塔』の昂奮を期待して手に取った。院長の謎含みの急死で、後任の院長権力争いが骨子のミステリー。医師・病院の本音と建前が赤裸々に語られて面白いのだが、シリアスな描写とコミカルな表現が玉石混淆なのが、個人的にはイマイチ不満です(作者の意図はエンタメ性も重視なのだろうが…)。物語の大義が「医療崩壊」への権力争いだけに、余談の笑いは、もっと控えめでも…。忘却の…山崎豊子『白い巨塔』の緊張感に、再度浸ってみたくなった。2019/08/15
アッシュ姉
85
ブラック羊先生降臨。国内最高峰の大学病院を舞台にした痛快ドタバタ劇。院長の座をめぐり繰り広げられる不毛なバトルに黒笑いと苦笑い。内科と外科の対立に始まり、メジャーとマイナーの科の区別、扱っている臓器による格付けなど、序列の多さに仰天。自分の専門こそ最も重要で一番偉いという自画自賛、他の科に対する罵詈雑言がまぁひどい。かなり誇張されているが、多分に真実が含まれていると思われ、病院に行くのが怖くなること請け合い。ハチャメチャなブラックコメディが新鮮だったけど、ブラックシリアスな長編をまた読みたい。2019/10/21
五右衛門
56
読了。始めは白い巨塔ばりの話を期待していましたが全く違った話でした。突き詰めれば院長の座を狙って争うんですが…最後の最後にこの作品はフィクションであり、実在の人物・団体とはちょっとしか関係ありません。ってネタですな。極々一部の極々狭い範囲の一握りの人たちだと思いたいです。2021/04/15
はれひめ
46
面白い巨塔とは如何にも。 内科と外科の覇権主義を誇張し過ぎ。裏を返せば医師が専門学科を愛し過ぎる所以からくるマウント取り合いか。多数の登場人物の命名からしておふざけが過ぎていて、途中からは流し読み。2020/08/18
yamatoshiuruhashi
46
大学病院の病院長が急死しその後釜を狙う4人の教授たちの動向をスラップスティック調に描く。ノンフィクションライターが取材をしているという体をとっているが、この医療関係者たちの話すことはいかにも真実味がある。各診療科は他科をどう捉えているか、医師は医師以外をどう扱い患者と病気をどう考えているか。不朽の名作「白い巨塔」の範疇から抜け出し得ない状況であるがこれは現実がそうなのであって作者のせいではないだろう。往年の筒井康隆を思わせる軽快で毒を含んだ文章に段々と引き込まれてしまった。2020/01/31