内容説明
百歳を超えた今でも筆をとり、制作に励む孤高の美術家、篠田桃紅。その墨を使った独特の作品は、世界中から注目されている。「人の成熟はだんだん衰えていくところにあるのかもしれない」「人生、やり尽くすことはできない。いつもなにかを残している」。老境に入ってもなお、若さに媚びず現役を貫く、その強い姿勢から紡がれる珠玉のエッセイ集。
目次
第1章 今までになかったことがたくさん、日々新しく生きている(真実に生きるとは、どういう生き方なのか;年寄りと付き合うのは、大変かも ほか)
第2章 昔のことのようでもあり、昨日のことのようでもある(おぼろげな記憶に残った寄席;御用聞きに来た和菓子屋さん ほか)
第3章 世の中はどんどん変わっている、自分も変わっている(年末年始は、筋書き通りに忙しい;節分で自分の内なる鬼を追い払う ほか)
第4章 ほかの生き方があったかというと、これしかなかった(涙が出そうになるのをこらえた;私を立ち返らせたニューヨーク ほか)
著者等紹介
篠田桃紅[シノダトウコウ]
美術家。1913(大正2)年生まれ。墨を用いた抽象表現主義者として世界的に広く知られており、数えで一〇七歳となった今も第一線で制作している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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りるふぃー
12
ちょっとの間、読書から遠ざかっていた私のざわついた心を鎮めるかのように、桃紅さんの文章は私に染みこんで、読書の楽しさを満喫させてくれました。明治、大正、昭和初期生まれの方は、戦争という地獄を体験していると同時に、戦前の、失われた宝物のような時代をも生きてきている。その記憶や情景や音は、100歳を越えても鮮やかに蘇るらしい。むしろ、年を重ねるほど、意識が過去と繋がりやすくなっていくのだろうか。戦前の話がたくさん書いてあり、憧れました。 2021/04/22
ハル
1
⭐⭐2019/07/08
Koco
0
内容はとても良い。100歳を超えてなお矍鑠とされていて、シンプルで柔らかい文体に人柄が見え隠れする。内容は。と限ったのは、編集者の伝えたい気持ちがゴリ押されているような抜き出し。読み手に好きに読み取らせてくださいよ。と、心底思った。それはさておき。後半は過去のエッセイの加筆修正。言葉の選び方が綺麗。心の持ち用が平坦で、謙虚でいることが美しいことなんだと感じる。趣味は朝寝坊と夜更かしはお茶目で可愛い。別荘で見た富士山が見せる色合いの変化、「ときを惜しむ」という表現にぐっときた。2021/05/18