内容説明
海外で高く評価され、作品が高額で取引される村上隆。彼が他の日本人アーティストと大きく違ったのは、作品性の高さのみならず、欧米の芸術構造を徹底的に分析し、世界基準の戦略を立てたこと。作品をブランド化する方法、プレゼンテーションの秘訣、才能を限界まで引き出す方法…。稀代の芸術家が熱い情熱と冷静な分析をもって語る必読の芸術論。
目次
第1章 芸術で起業するということ(芸術には、世界基準の戦略が必要である;なぜ私の作品は一億円で売れたか ほか)
第2章 芸術には開国が必要である(芸術家は、技術より発想に力を注ぐべき;世界で評価されない作品は、意味がない ほか)
第3章 芸術の価値を生みだす訓練(六八〇〇万円の源は「門前払い」だった;評価されていない作品ほど大化けする ほか)
第4章 才能を限界まで引きだす方法(作品が歴史に残るかどうかが問題である;徹夜なんて、努力のうちに入りません ほか)
著者等紹介
村上隆[ムラカミタカシ]
アーティスト。有限会社カイカイキキ代表。1962年東京に生まれる。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。アニメから日本画までを貫く日本独自の美意識を「スーパーフラット」としてコンセプト化し、現代美術の巨匠として世界で活躍している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ
56
僕は謂わゆるクールジャパン?的なアニメ・フィギュア等的な世界観から1番縁遠い人間ではあるが、書店でこの本手にして芸術の世界観が面白かったので購入。芸術の捉え方とプロデュースの相違なんだなと。芸術はマネジメントなんだと。ということはマネーに抗えない。マネーは欲望の如実な一端。ということは、マネーを唸るほど持つものはとんでもない欲望の具現化に大量のマネーを払う。例えば魯山人の評価の差だと。僕の美的・理解領域尺度で言えば、ロールスロイスの品のなさとジャガーの品の良さの差。ほう、と読了。2018/12/30
すしな
45
085-24.2024年の”もののけ 京都”展に関連したYoutubeで対談されている動画が面白かったので読んでみました。2006年の本なので、現在はまた違ったステージなのでしょうけど、当時すでにルイヴィトンとのコラボや、等身大フィギュアを成功させていて、その時の勢いを感じることができる内容でした。これまで村上さんについては軽薄さを伴った作品の印象だったのですが、ガラパゴスだった日本の芸術界に風穴を開けようと、芸術界を牛耳っている西洋に伝わるような文脈を提示してきたとのことでした。2024/09/19
tonpie
40
以前、村上春樹をポップアートだと読書メータに書いてしまったけど、何故ポップアートなのか、自分でも半分納得がいかないでいた。村上隆「芸術起業論」を再読して、なぜここでポップアートという言葉が出たのか、合点がいった。 「芸術起業論」は、自分のアートを芸術として売るためのマーケティングの実践の記録だ。高額なアートを買う「大金持ち」がどんな判断で画を買うか、とことんマーケティングしている。画家は、画で食おうと思えばみんなこれを考えるはずだ。ゴッホですら、弟への手紙にそのようなことを書いていて、驚いたことがある。2024/03/17
kubottar
21
インパクトのある表紙のせいか、レジの店員さんがビックリした本。しかし、中身はまっとうな芸術論です。意外だったのは、芸術家は好き放題作品を作ってるのではなくて、スタジオ内は、完全分業されていて地道な作業をコツコツ1年中やらなければならない。芸術家のイメージが少し変わりましたが、お金をだすパトロンを納得させなければならない作品を作る大変さが伝わってきました。2020/03/31
阿部義彦
21
幻冬舎文庫新刊。村上隆さんの作品は正直自分にはピンと来ませんが、日本の美術界が殆ど美術大学を頂点としたヒエラルキーになっており、蛸壺化して蛸が自分の足を食べるように、受験産業のための金集め、美大教授が上がりの双六ではたしかに海外に太刀打ち出来ないとは、その通りだと思います。現代美術では本当に20年以上遅れているというかその自覚もなく、未だに平面絵画の技術一辺倒ではねー。バンクシー、チンポム頑張れ!とエールを送ります。この本の海洋堂やオタキングとの熱いやり取りを読めただけでも良かったです。2018/12/08