内容説明
妻を失った上に会社を追われ、故郷を離れた五十四歳の亮介。十年所属した芸能事務所をクビになった二十九歳の紗希。行き場を失った二人が東京の老舗キャバレーで出会ったのは運命だったのか――。再会した北海道で孤独に引き寄せられるように事件が起こる。そこにあったものは「愛」だったのか?驚愕の結末が話題を呼んだ傑作サスペンス長編。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゴンゾウ@新潮部
109
桜木さんの作品にしては淡々としているなあという印象でした。最終章までは。正直物足りないと思っていましたが、最後の紗希の犯罪までは。そしてタイトルの意味がわかります。2022/06/12
あすなろ
97
新潟と南神居町。亮介と紗希。なかなか凄味のある作品。桜木氏のまた違う一面を見せられた。それを愛とは呼ばすという題名とラスト寸前に至る迄、恋愛的小説かと思えば最後にこの題名の台詞が出て来る。そこで一気に赴きを変えてお仕舞い。まあ、何となくは分かりましたがこの落としはすごいなと感じ入って読了。2020/11/08
machi☺︎︎゛
90
最後まで読んでタイトルに戻るみたいな話だった。10歳年上の奥さんを失った亮介と若くてキレイな紗希との恋愛小説だろうと読み始めたら全然違った。紗希の静かだが強い狂気が怖かった。最後までいい意味で裏切られる展開と、北海道や新潟の雰囲気がピッタリの本だった。 2018/11/29
アッシュ姉
88
夢破れ、居場所をなくした男女が奏でる哀しい旋律。行き場を失ったもの同士が吸い寄せられるように出会ったのは運命か。いまにも崩れ落ちそうなほどあやうく、もろく儚い気配が色濃く漂うなか、緩やかに忍び寄る逢魔が時。ある予感をもって迎えた終章。私の予想は見事にはずれ、そっちかーいと天を仰ぐ。「それを愛とは呼ばず」…ええ、呼びませんとも!桜木さんにしては随分あっさりと思いきや、まさかの展開に驚嘆。忘れられない結末に心のざわめきが治まらない。2017/12/05
しげ
75
桜木作品には珍しく淡々としたストーリーかと思いきや結末で驚きました。ヒロイン紗季の決定的なターニングポイントが今一つ釈然としませんが、報われる事の無かった10年を想えば歪んでしまった「幸福」に対する考えも少しは分かる気がします。ただ説得材料としては少し薄いと感じます。全体的にぼんやりとした読後感となりました。2023/09/02