内容説明
流産を重ね授かった最愛の息子が池で溺死。絶望の淵で母親の知可子は、息子を産み直すことを思いつく。同じ誕生日に産んだ妹に兄の名を付け、毎年ケーキに兄の歳の数の蝋燭を立て祝う妻の狂気に夫は怯えるが、知可子は歪な“完璧な母親”を目指し続ける。そんな中「あなたの子供は幸せでしょうか」と書かれた手紙が―。母の愛こそ最大のミステリ。
著者等紹介
まさきとしか[マサキトシカ]
1965年東京生まれ、札幌育ち。2007年「散る咲く巡る」で第四十一回北海道新聞文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
144
初読みの作家さん。なかなかに重い。この世に『完璧な母親』など存在するのか?そもそも完璧な母親って何?この母しか知らないんだもの。隣の芝生を羨んでも仕方ないよね。そこでだ、この小説は『赦し』が幹になっていたが、この中の女達の誰にも共感は出来なかった。事故で息子を失った母の思いから始まるのだが、行きついた先は故意だった。物心ついたときには既に、自分が生まれる前に亡くなった兄を自分の中に見る母親に育てられた波琉子が憐れだ。普通に育てられていたら、その後の生き方も違っていただろうに・・読後感は悪かった。2017/04/21
おかむー
113
これは少々感想が難しい・・・結果としてモヤモヤしたのでもいまひとつですかな。『もうすこしです』。失われた子供への偏った愛情ゆえに狂気へと傾いてゆく母親を軸とするふたつの家族。そしてそんな母親に育てられ成人した子供の視点からふたつの家族の接点が描かれる。■中盤まで狂気ゆえに起こる事件の結果がはっきりとは描かれず、一見繋がりのないふたつの家族が終盤でつながってゆく展開はその結末を見届けたくなるという意味で読ませてはくれたのだけれど、それまでの強烈なエピソードの割にはラストのインパクトに欠けるところが惜しい。2017/01/28
ゴンゾウ@新潮部
105
母性ってなんだろう。歪んだ愛情の犠牲となった波流子のことを考えると最後まで釈然とした思いが拭えなかった。2021/07/22
まさきち
96
突如息子を失った母親の歪んだ意志によって誕生した娘は、亡くなった息子の生まれ変わりとして育てられていく。その近辺でまたもう一つの親子も事故の影響で生まれた母親の歪んだ思いに絡み取られ、長い苦しみの中へと落ちていく。全体的に幸せな人は登場せず、暗い思いに長年苛まれている人ばかりで、非常にどんよりとした心持ちで読了です。2025/03/04
M
96
不幸な出来事の波及。母親が子供に及ぼす影響の大きさをあらためて思った。リアリティがないようなあるような物語。2017/10/29