内容説明
父母の故郷天草の雑煮、今はなき三浦屋のレバカツ、母にねだった塩おにぎり、少年期の大好物焼き蓮根、自ら絶品と称した手製の豚ロース鍋…。食を通じて蘇る記憶はどれも鮮やかに「家族の日常」を浮かび上がらせる。あわせて、長女・ハルノ宵子が愛情とユーモア溢れる筆致で晩年の父の姿を瑞々しく綴る。胸と胃袋を打つ、珠玉の食エッセイ。
目次
正月支度
天草×東京=?
味についてあれこれ
黄金時代の味
アジア的な香辛料
命の粉
豚ロース鍋のこと
白菜ロース鍋論争
かき揚げ汁の話
恐怖の父の味〔ほか〕
著者等紹介
吉本隆明[ヨシモトタカアキ]
1924年、東京・月島生まれ。詩人、文芸批評家。「戦後思想界の巨人」とも呼ばれる。2012年3月16日逝去
ハルノ宵子[ハルノヨイコ]
1957年、東京生まれ。漫画家。吉本隆明の長女として生まれる。妹は小説家の吉本ばなな(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ホークス
41
吉本氏はちっとも知らないが、その最晩年の食のショートエッセイ。娘の回顧エッセイが掛け合い的で面白い。大正生まれで戦前の話も多く、老齢ゆえの夢見る様な描写、いきなり覚醒する感じも生々しい。焼き蓮根は初耳だがとても美味しそう。おから寿司は自分も苦手だが、親娘とも大嫌いなのがおかしい。阪神ファンである理由は、選手の雰囲気が「素質ある怠け者」の感じだからって表現が楽しい。特定チームのファンになるのは「呪い」だという話に納得。最後は記憶も怪しくなりネタも尽き、亡くなる所迄書かれている不思議なエッセイである。2018/08/04
ユメ
30
吉本隆明さんが記憶に残る食卓の風景について綴ったエッセイ。本書の肝は、その一編一編に、娘のハルノ宵子さんの追想が寄せられていることだ。父の思い出と娘の綺麗事ではない本音が交互に重ねられることによって、吉本家の食卓が立体的に浮かび上がる。ハルノさんの文章はばっさりと容赦なく、父が美化した実情を暴露し、父の老化を指摘する。だが、そこには隠しようのない父への愛情と哀惜の念が滲んでいた。あとがきでハルノさんが「この原稿を書くことで父の死に折り合いをつけられた」と述べているのを読んで、私まで安堵したほどだ。2018/02/16
窓(。-_-。)
19
★★★★☆ 吉本ばななさんとハルノ宵子さんのお父さんと知り気になったのパラパラ📖 ん?これは好きなやつ!ハルノさんの絵と文章が間に入りながらの食エッセイ、固いイメージのあった吉本さんでしたがハルノさんの語りが面白く一気に読みました。 2023/09/26
しましまこ
19
ハルノ宵子さん買い。お父様の食にまつわるエッセイに、ハルノさんの楽しく時に切ないつっこみエッセイ、時々イラスト。ご飯で家族の姿が生き生きと。梅干しに味の素てんこ盛りも驚いたが、更なる驚愕はハルノさんのお母様、料理を作ることも、食べることも!全く愛せない人がいるなんて…2017/11/04
katoyann
15
グルメ雑誌『dancyu』に掲載されていた吉本隆明のコラムに身辺の介護をしていた漫画家のハルノ宵子の回想を組みあわわせて編集した本。食事の思い出がメインとなるが、思想家というよりも詩人としてのセンスを感じるエッセイとなっている。中高年の時は血糖値が高く、医師から食事の注意を受けていたにも関わらず、揚げ物ばかりを食べ歩いていたという。昔の写真を見ても太っているイメージはなかったが、魚の類が苦手など、偏食であるということがおかしかった。ハルノ宵子の回想も、歯切れが良くて楽しい。2024/09/01