内容説明
「命と正面から向き合うことでどんな悪党でも更生する可能性がある。これは、実際に死刑囚と向き合ってきた私の確信でもある」。獄中で『無知の涙』を著した永山則夫。彼が被告人だった頃に言葉を交わした元刑務官が、刑場の公開や裁判員裁判で関心が高まる今、永山の死刑執行に隠された残虐な事実を曝し、改めて死刑制度の是非を問う、衝撃の書。
目次
第1章 死刑執行命令―永山則夫の真実
第2章 刑死の作法―死刑囚の死に様
第3章 東京拘置所死刑囚舎房―刑務官と死刑囚
第4章 レクイエム―宗教家と死刑囚
第5章 冤罪の正体―免田栄さんからの手紙
第6章 死刑の境界―極刑を逃れた男
著者等紹介
坂本敏夫[サカモトトシオ]
1947年熊本県生まれ。元刑務官。ノンフィクション作家。67年大阪刑務所刑務官に採用される。以後、神戸刑務所、長野刑務所、東京拘置所、甲府刑務所などに勤め、94年広島拘置所総務部長を最後に退官。多数の映画・テレビドラマを監修(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ココロココ
17
衝撃的なタイトル。誰が殺したのかは、国民が殺したと筆者は言う。周りにそういう人はいないし、私にとって死刑は他人事であった。死刑制度はあるが、執行を停止しているのが望ましいとも筆者は言う。冤罪はもちろんいけないし。実際袴田巌さんは死刑執行を停止されて釈放されたが、今までにも冤罪で死刑執行された人はいると思うので、死刑執行は慎重になる必要がある。他にも色々読んでみたい。2019/02/16
kiki
5
死刑というものがどんなものなのか、それに携わる人達の大変さと苦悩とはどんなものなのか、本書を読む事によって知る事が出来ましたが、死刑制度の良し悪しについてはますますわからなくなっていきました。タブー視せずに、国民はもっともっと死刑制度について知るべきだと思いました。2022/09/28
sasha
4
著者は元刑務官として被告時代の永山則夫とも接している。刑務官視点での死刑制度を考える。命の償いの為に命を奪う。だが、その執行に携わる人がいるんだよな。そして、死刑執行命令書にサインする法務大臣は私たち国民が選んだ国会議員だ。死刑賛成派も反対派も、もう一度考えてみる方がいいのかもしれない。死刑囚を殺しているのは私たちなのだ。命は命で償えないのに。2016/02/13
もりえ
3
ずっと前は「死刑を無くしたら悪い事する人が増える」と単純に考えていた自分がいたけど、今は真逆の事を思っている。いろんな真実を知れば知るほど、ますますもって死刑制度は即刻廃止しなければと思う。この本を読んで、死刑囚の扱われ方が昔より悪くなっているような事が書いてあって、怖い事だと思った。なんか、最近日本人が嫌い。もう日本にいたくなくなってきている今日この頃。2016/04/21
Ikuto Nagura
3
実際に執行に携わった元拘置所刑務官が書いた死刑の真実。『誰が永山則夫を殺したか』という題名の問いかけに、私たちはどう答えるべきか。事件から容疑者逮捕まで熱狂し、死刑判決に対して喝采し安堵する。命をもって償えと、外野から声を大にして叫ぶ傍観者と、現場で執行に関わり精神を病む刑務官たち。「他人の命を奪った報いに命を取られるのですから、悟りを開いて、穏やかに命を捧げては、被害者や遺族の方に申し訳ありません」と敢えて潔く刑に臨まない死刑囚は、私たち以上に人間ができている。私たちは、どんな殺人者よりも酷い殺人者だ。2014/12/27