内容説明
学級委員長のわたしは、貧血の時に助けてもらったことから、落ちこぼれの鹿山くんと親しくなる。読書が苦手だと言う彼に、わたしはある小説を薦め、それは彼の思わぬ才能を開花させるきっかけとなった。だが周囲の反対で、二人は会えなくなってしまい…。実らなかった初恋が時空を超えて今の自分に届く。表題作ほか二作を収めた傑作恋愛小説集。
著者等紹介
市川拓司[イチカワタクジ]
1962年東京都生まれ。2002年『Separation』でデビュー。03年に発表した『いま、会いにゆきます』がミリオンセラーとなる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐々陽太朗(K.Tsubota)
122
三編とも人とは違う美しさ、才能を持ちながら周りから理解されず孤高を保って生きている人を好きになる話だ。”誰かの美点に気づく者は少ないけれど、揚げ足とりや間違い探しが得意な人間は掃いて捨てるほどいる。そういうことなのだ。” 著者自身が発達障害の一つ自閉症スペクトラム」であって、子どもの頃は手の付けられない問題児とされていたこと。三編ともがそんな経験を持つ著者の魂の叫びだ。小説としてまだまだ洗練されていないと感じる。しかしそれはテクニカルな問題であって、小説の本質ではない。氏の小説には”切実ななにか”がある。2016/11/01
aoringo
92
どこまでも優しいストーリー。はぐれ者の彼らにとって生きていくことはそれだけで勇気がいる。でも自分のこと以上に考えてくれる人はどこかに必ずいて、もしかしてもう出会っているかもしれない。それに気づくことができた彼らは何よりも尊いものを手に入れた幸運の持ち主。その人がいるだけでどんな険しい道でも前に進もうと思える。希望の星となる。回りくどくなったけどつまりそれが恋であり愛というものなのだろう。自分もこの本の人たちのように大事な人のことをちゃんと愛せているかな...胸に問いかけました。2022/12/17
Tαkαo Sαito
91
昨日書店で適当に選んで買いました。久しぶりに小説が読みたい気分だったからです。アタリの本でした。切ないけど最高でした2015/05/10
さっとん
65
久しぶりの市川さん。 3編からなる短編集で全て高校生の恋愛を描いた青春小説なのですが、どの話も片方もしくは両方が少し変わり者という設定。 クセのあるキャラや、強すぎる個性故の不遇をキレイで透明感のある文章で描く市川さんの世界観はとても独特で心地良かったです。 心温まる、そして心洗われる一冊でした。2021/08/02
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
57
10代の恋をテーマにした繊細な三篇。17歳の優等性と「問題児」の本を通じた恋愛を描く表題作。16歳の長距離ランナーの少女と歌がうまい少年の交流を綴った『Your song』。14歳の時、転校生の少年が、そこで出逢った女の子への気持ちを語る『泥棒の娘』。「わたしたち、これから先、どうなるの?」「自分にとってふさわしい場所に行くんだ」 一篇の中の台詞ですが、三つの物語を象徴していると思いました。「自分に」が「自分たちに」と交わるほど大人ではない主人公たち。だけど、まっすぐに未来をみる視線が優しく眩しい。2014/06/22
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