内容説明
杏平はある同級生の「悪意」をきっかけに二度、その男を殺しかけ、高校を中退して以来、他人とうまく関われなくなっていた。遺品整理会社の見習いとなった彼の心は、凄惨な現場でも誠実に汗を流す会社の先輩達や同い年の明るいゆきちゃんと過ごすことで、ほぐれてゆく。けれど、ある日ゆきちゃんの壮絶な過去を知り…。「命」の意味を問う感動長篇。
著者等紹介
さだまさし[サダマサシ]
1952年長崎市生まれ。國學院大学中退後、72年に「グレープ」を結成、「精霊流し」「無縁坂」などが大ヒットする。グレープを解散後、シングル「線香花火」でソロデビュー。2002年、初小説『精霊流し』がベストセラーになる。『精霊流し』をはじめ、小説『解夏』『眉山』はいずれも映画化、ドラマ化され、話題に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
151
命の重さと大切さを、改めて考えさせられる作品。月並みな言葉だが、命は大切で貴い。この作品を読んだ後では、命についての考えが変わると思う。悪魔的に嘘をつく同級生により、人生を狂わされた主人公。遺品整理業の会社で働くにつれて、彼の心にも変化が。世代にもよるが、私は漠然と死はまだまだ先だと考えていた。その為に生死についての極端で無責任な言葉や考えも浮かぶ。実際は全ての人に平等に死は訪れる。その事実を本当に実感すれば、自分や周囲の命を大事に考えるはず。日々を大切に丁寧に生きる。見える景色も変わる。素晴らしい作品。2020/08/27
ショースケ
138
なんでステキな一冊だろう 遺品整理会社に心の壊れた21歳の杏平が見習いとして入り、いろんな経験や多くの人たちに囲まれて成長する…一言で言えばそういう話。現在の遺品整理の仕事と過去の彼の辛い話が交差して進む 高校の同じ登山部の松井はなんてイヤらしい性格をしてるんだ 心を閉ざした原因となる松井に辟易しながら読んだ そして遺品整理という壮絶な仕事の大変さ、言葉て表せない凄まじさ、生と死の隣り合わせの大切さを生々しく描いている さだまさし氏は初読みだけとまたいろんなもの読んでみたい2024/10/09
mint☆
130
心を病み高校を中退した杏平。遺品整理業の過酷な仕事をしながら少しずつ再生していく。心を壊したのも周りの人間だしそこから救ってくれるのも周りの人間。「"その時"にどんな言葉を聞くかで、人生は大きく変わってしまうことがあるのだ」。10年くらい前に一度読んだけど古さを感じさせない今でも良い本。改めて命について考えさせられた。2022/08/19
takaC
129
遺品整理業とは過酷な仕事なんだな。それも含めて最初から最後まで結構重たい話で気が沈むので読み時は選んだ方が良いかも。2017/02/12
おかむー
109
じんわりと染みるよい作品。『現場』の描写にはじまり主人公杏平とゆきの過去など、起きている事柄はかなり強烈なのだけれど、杏平の心そのままに全編が淡々と描写されているので直接的なエグさがひかえめな感触なのは上手さなのだろう。遺品整理の仕事とそれをとりまく人々に触れることで動き出す杏平の心。ただ杏平が「ゆきの過去に比べて俺はなんてつまらないことで…」という部分に関しては、物事の受け取り方、ダメージの受け方、何をもって追い詰められるかは人それぞれなのだから「俺なんか…」はよせよと思ったものです。『よくできました』2014/06/29