内容説明
長い同棲を経て結婚した大木信義と咲は、占い師にのせられ久しぶりの旅に出る。小さな池を抜け、向かった先は一泊二日の地獄旅行。猫畑、巨大旅館、ビーフシチュー温泉、そして赤と青の地獄人。不思議な出来事ばかりの奇妙な旅路は、馴れ合いになった二人の意識を少しずつ変える―。異世界だから気づく大切なこと。笑えてなぜかせつない物語。
著者等紹介
前田司郎[マエダシロウ]
1977年東京都生まれ。劇作家、演出家、俳優、小説家。劇団「五反田団」主宰。2005年『愛でもない青春でもない旅立たない』(講談社)で小説家デビュー。08年には、戯曲「生きてるものはいないのか」で第52回岸田國士戯曲賞受賞。09年「夏の水の半魚人」が第22回三島由紀夫賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sibafu
17
著者の前田さんが原作・脚本・監督を担当した『ジ、エキストリーム、スキヤキ』の映画が好きだったので、こちらを読んでみる。長い同棲期間を経て結婚した若いカップル。少し倦怠期気味ななか、五反田のデパートの屋上から地獄へ旅行に行くことになる。地獄だけどゆるい旅行。夫婦がどちらも鈍い人間だからか。「じごく」という感じ。深刻さはないがシュールさとこのファンタジックな物語は安部公房を思いだす。『カンガルーノート』で地獄へ行く話があったな。ほのぼのとしていながら、意外と結婚について考えさせられたりでおもしろい。2015/05/17
名古屋ケムンパス
14
意外と面白いんです。どこかと問われれても困りますが。なんだかギスギスしていた新婚のふたりが何故だか地獄に旅立ってほっこりします。とりとめのない日常の想い自体はそれ程変わっていないのに、地獄への旅行という非日常のなかでふたりの距離は確実に近づくことになりました。とりわけ地獄に暮す幼い姉弟達との出会いは、物語全体を優しいものに変化させた気がします。私もこんど東京へいったら、デパートで「地獄ツアー」のパンフをもらおうと思います。「東急」かな「小田急」かな、それとも「西武」かな?2014/02/02
乱読999+α
11
シュールでリアルなそれでいてファンタジー、ありそうでなさそうな地獄旅行。倦怠期に差し掛かった夫婦が、格段の興味もなく何とはなく行った地獄。赤鬼、青鬼はいるものの想像とは全く異なった地獄、人間が進化或いは退化した鬼達のいる地獄。フッと笑えるが、でも切ない。そんな中で夫婦二人がお互いを緩くはあるが再認識して新たな一歩を歩み出すのは微笑ましい。繋いだ手は離さずに・・・2017/08/15
Te Quitor
11
地獄への旅行記。緊張感の欠片もない世界観が持ち味の前田ワールド。不自然な描写に「何故だ」と理由を求めることは禁物だ。突っ込みどころ満載だがそれをあえて堪え抜き、本を閉じた後にニヤリと微笑むというのがこの本の正しい取り扱い方(だったのだろうなぁ・・・)。個人的感覚だが、回りくどい文章に読み難さを感じた。そして視覚的な描写が苦手なため、内容は面白いはずなのになかなか世界に入り込めなかった。映画化されているらしく、観た後に読めば感想も変わるかもしれないね。今度探してみよう。2014/06/28
くまちゃん
10
映画の方を観ようかと思ってDVDを手に取ったけれど、なんとなく嘘くさくて止めていた。それで本の方はどうかと読んでみました。もちろん、嘘くさいw。でも映像にされるより、自分の想像力で地獄を予想する方が断然面白いと思う。2016/11/08