内容説明
映画館でバイトを始めた恵介。そこで出会った映写技師のルカは、一歩も外へ出ることなく映写室で暮らしているらしい。なぜ彼女は三年間も閉じこもったままなのか?「ルカの過去について質問してはいけない」など三つの不可解な約束に困惑しながらも、恵介は固く閉ざされたルカの心の扉を押し開いていく。切なく胸を打つ、青春ミステリ感動作。
著者等紹介
関口尚[セキグチヒサシ]
1972年栃木県生まれ。茨城大学大学院人文科学研究科修了。映画館の映写室でアルバイトを続けながら、小説を書き始める。2002年「プリズムの夏」で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。07年『空をつかむまで』で坪田譲治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Shinji
110
確かに昔観た映画館では、スクリーンに伸びた光をたどったら映写室があったよなぁ。映写機からの光の中にホコリが舞ってるのがみえたり、人影が見えたり、そういうことが楽しかったな。映写技師という職種が良く分かる作品でしたが、ルカの言った「やさしいという生き方ほどつらいものはない」って言葉に胸が痛くなった。レイジの性格、行動に本気で胸クソ悪くなったけど、涙の意味を取り違える女の子の気持ちもわからないでもない。恵介、春人の優しさにもちゃんと理由があった!ラストシーンは映像で観たくなるほど秀逸の青春ミステリでした♪2015/12/05
へくとぱすかる
82
青春ミステリとあるが、むしろ人間関係を描く小説として、深く染みこむ作品。人間はわかりあうべきだ、というのはその通りだが、決して人の気持ちをわからない、わかろうとしない人も一定存在する。このテーマが複製・再現されて進行することに、やりきれなさ、目をそむけたくなるような、一種の限界を感じながら読んだが、まともに生きようとする側に、救い・展望をもたせたラストに感動。 2016/07/09
ちょこまーぶる
55
初めて読む作家さんでしたが、スラスラと読めて大変面白かったですね。ラストシーンは良い感じです。ルカの心情、恵介兄弟の家族内葛藤やるルカを信じる思いなど、重く表現されたらちょっと読んでる方が辛く感じてしまうだろうところを軽妙(私がそう思っているだけかも・・・)に表現されているからこそ楽しめました。また、本屋でこの作家さんの本に出会ったら、手を伸ばす可能性が高いです。2013/06/14
takaC
53
文庫を買って積んでいたので3年ぶりにこの話を読んでみた。嫌いではないけれどやっぱり大人向けの本ではないかな。自分の中ではルカと言えば、出会った順に、3.乾ルカ、2.技師長ルカ、1.ルー・ルカ。2012/06/26
NAO
44
パコのひとだと思い読みました。若いけど傷ついた人たちのはなし。やさしいという生き方ほどつらいものがないって最後で納得。デジタルよりアナログ!本もアナログ!2016/02/04