内容説明
英語、数学、測量、航海術、造船技術…アメリカでさまざまな知識を身につけた万次郎は、愛妻の死を契機に望郷の念を募らせる。やがて鎖国状態の日本へ命がけの渡航を試みるが、晴れて十数年ぶりに降り立った故国は黒船来航を端緒とした未曾有の国難に面していた。卓越した才学で開国に向かう日本を陰で支えた男の数奇な後半生。圧巻の人物評伝。
著者等紹介
津本陽[ツモトヨウ]
1929年和歌山県生まれ。東北大学法学部卒業。78年、「深重の海」で第七九回直木賞、「夢のまた夢」で第二九回吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころりんぱ
41
まさに日本とアメリカの架け橋となった万次郎。中の浜の貧しい漁師の息子だった万次郎が漂流し、アメリカの捕鯨船の船長に助けられ英語を習得し、アメリカの航海術、算術、文化、文明を吸収しまくり、当時としては超レアな人物に育ったこと、それがちょうど江戸→明治の開国、文明開化という激動の時代だったことに歴史の面白さを感じます。勝海舟がちょっと嫌な感じに描いてあるとか、以蔵に護られていた史実とか、幕府以外にも薩摩、長州、土佐と渡り歩いて航海や軍備、英語を教授していたという時の人ぶりなど、興味深く面白く読めました。2016/11/16
ロッキー
28
ちょっとネタバレになりますが…ジョン・マンは日本へ帰国する決意をし金鉱で旅費を工面し琉球へ。しかし罪人扱いされるが言語取得能力に長けていたため次第に琉球弁・仮名を覚え少しづつ住民と親しくなり、そして薩摩の島津斉彬公が海外事情に聡明だったため厚遇されたのが大きかったのだろう、紆余曲折を重ね無事故郷へ。この2人のやりとりが楽しい。そして幕臣へと…。やはり外国を知っている中浜万次郎の日本への影響力はすごいですね。万次郎のアメリカ生活を記した河田子竜の『漂撰記略』により坂本竜馬に開国への道を進む影響を与え、(続)2011/08/29
Willie the Wildcat
23
氏のアメリカとの親善に果たした役割は、1個人としてはやはり異例。惜しむらくは、その才覚・人脈を活かしきれない時勢。一方で、(矛盾しているが)氏の人柄を表した「静かな後世」に感じる。特に、奥様を亡くされたことも、この”静か”に感じた一因の気がする。私心なく、義・感謝の念を根底に日々精進。維新志士と称される派手な活躍はないかもしれないが、その生き様に学ぶことは多々ある。高校生になったら子供達にも読んで欲しいなぁ。2012/10/28
なの
18
船長との再会は感動的でした。 晩年をもう少し知りたい気持ちがありますが、読後感は良かったです。 士族の中にもあった身分の壁以上の高い障壁を超えた才能を、それでも活かしきれない組織風土に愕然とします。自らも改めるべきところがあります。 あとがきで紹介されている漂流記もいつか読んでみたいです。2019/07/30
himawa
15
ハードカバー本。感動した。ほんとうに波乱万丈すぎる...。タイトルの意味が心に響いた。日本に帰ってからの活躍やいかにってほんと期待していたんだけど、肝心なところで重用されず。水戸斉昭、勝麟太郎ってなんで!なぜ?..やはりこの国はそういうことなのかって悲しくなった...。アメリカ=自由な国ってちょっと違うかなぁって思っていたんだけど、あの当時の日本からみたらほんと自由平等の国だったんだなぁ。この作品を読んで、なんて言っていいかわからないけど、日本人の...私の、なにかが痛い...と思った。2014/03/09