内容説明
ヘルシンキの街角にある「かもめ食堂」。日本人女性のサチエが店主をつとめるその食堂の看板メニューは、彼女が心をこめて握る「おにぎり」。けれどもお客といえば、日本おたくの青年トンミひとり。ある日そこへ、訳あり気な日本人女性、ミドリとマサコがやってきて、店を手伝うことになり…。普通だけどおかしな人々が織り成す、幸福な物語。
著者等紹介
群ようこ[ムレヨウコ]
1954年東京都生まれ。日本大学芸術学部卒業。いくつかの仕事を経て本の雑誌社に入社し、84年「午前零時の玄米パン」でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
797
群ようこさんは初読。この人の人生観は楽天主義なのだろうなと思う。人生に対する楽観がこの小説全体を覆う。それにしても、「起」の部分はあまりにも安直に過ぎる。なにしろ、ヘルシンキで食堂を開く資金の調達先が宝くじなのだから。「承」以下はそれなりに。また、明確な「結」がないのは当然で、それはむしろそうあるべきだ。テーマからすれば、30代後半、40代、50代の女性たちによる、遅れて来たビルドゥングス・ロマンといった趣きか。日本のどこかの港町を舞台にしていたならば、演歌っぽくなるところだろうが、そこはヘルシンキの力。2017/02/12
ミカママ
597
何度目かの再読。映画も鑑賞済み。群さんの作品はほぼ完読していると思うけど、これは舞台からして本当に異色である。彼女自身、ハタチのころアメリカ周遊したり、異国へのなじみはあるのだろうけど。これはなんといっても、フィンランドという土地を選んだ題材の勝利だろう。舞台がロスやタヒチや香港では、こういう作品にはならなかった。今までムーミンしか知らなかったかの地への、著者のあたたかい目線が心に沁みる作品。そしてもれなく、おにぎりが食べたくなる。2019/04/02
風眠
485
映画を観たからいいか・・・と、通り過ぎていた本。映画には映画の解釈があって、ちょっと違う設定だったんだなということが、原作を読んでよく分かった。映画は淡々とした日常だけれど、生き生きと暮らしている様子が描かれていたが、原作では淡々とした中にも、いろーんなドラマがあって、人間そのものが描かれているヒューマンドラマの感じが強いなと、私には感じられた。なぜフィンランドなのかという本質的なところが、登場人物たちにもよく分かってない気の抜け方がとてもいい。その抜け具合が気持ちをほぐしてくれる物語。2013/08/15
zero1
479
もしあなたがヘルシンキ(フィンランド)へ旅するなら。出発前に「ガッチャマン」の主題歌を練習するといい。きっと旅先で必要になる(笑)。合気道に親しんでいたサチエは母の死後、料理が得意に。遠い異国で食堂を開く。そこに日本女性がやって来て…。決して急がない世界観を退屈と見るか、それとも高く評価するか。読者が試されている作品と言える。あなたはどっち?サチエの父が作ったおにぎりは美味しそう。06年に小林聡美の主演で映画化。ムーミン、サウナだけでなくフィンランドは人を癒す場所かも。あなたは肩に力が入りすぎてない?2019/09/20
HIRO1970
470
⭐️⭐️⭐️最近また群さんの本を読み始めました。本作は国内の話と思いこんで手に取りましたが、まさかのフィンランドのヘルシンキでの表題名の飲食店開店のお話でした。現地では3人の日本人女性が登場しますが、それぞれ身内のものとの葛藤から現地入りを決定しており、皆現地の言葉が流暢でない分、本人の素の人間力がはっきりと見えてくる話で、ある意味人生の本質を突いたお話と言えるものでした。女性の方が若干感情移入し易いかと思いますが、全体に淡々とした筆致である為、男性にもオススメ出来ます。2016/02/10