内容説明
とある病院に入院した大富豪の偏屈じじい大貫は、そこで絵本好きな少女パコと出会った。ある日、勘違いからパコの頬を叩いてしまった大貫は、彼女が事故の後遺症で一日しか記憶がもたない病気だと知る。「ねえおじさん、前にもパコのほっぺに触ったよね?」。昨日を失った少女の心に特別な思い出を残そうとした大人たちの、心温まる奇跡の物語。
著者等紹介
関口尚[セキグチヒサシ]
1972年、栃木県生まれ。茨城大学大学院人文科学研究科修了。2002年、『プリズムの夏』(集英社文庫)で小説すばる新人賞を受賞してデビュー。07年、『空をつかむまで』(集英社)で第22回坪田譲治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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匠
147
数年前に映画を観て、とても好きになった作品。絵本とか魔法とかそんな言葉の印象から子ども向けのかわいいお話と思われそうだが、これは大人になった人のためのファンタジー。多少のツッコミどころはスルーできてしまうほど、強欲な人間のリアルな心情の生々しさと対比して、パコの天使のような無垢さが眩しい。それでも、どの登場人物にも無駄がなく、情けない人にも悲しい人にもどこか1つは共感してしまう部分があってホロッと泣けてしまう。何もかも綺麗に理想どおりにはいかないものだけれど、でもやさしくありたい・・読んだ後そう思えた。2013/09/12
KAZOO
135
若い人向きのアダルトファンタジーのような印象を受けました。私は子供が出てくるものには弱いのですが、この本もそうでした。結末はある程度予想がついてしまうのですが、やはり最後には涙が出てしまいます。もう少し文章を少なくして絵本のような感じにしてもらってもいいのではないかとも思いました。2015/11/22
ちょこまーぶる
102
読み終えた後「読んで良かったな~」と素直に思える一冊でした。内容としては、何とも悲しい話なんですが、そんな話から偏屈じいさん大貫の言動をわが身に置き換えると、読者に人としての懺悔のように迫ってくるんだけど、実は皆が改心した後の大貫じいさんのような素晴らしい心を持っている事にも気づかされてしまいました。物語の舞台は病院ですが、恐らく様々な生き方をしてきた人が集まり、色々な人生の縮図?のようなものが語り合われる場だと思うから、病院にはドラマが潜んでいるんですよね。病院勤めなのでそう思いますよ。映画も見よう。2016/01/27
七色一味
79
読破。映画のノベライズ版? と思いながら読んだけど、最後で舞台脚本のノベライズ版だということがわかった。ということは、映画とも多分違うんだろうなぁ。「断章」のあとの大貫さんの様変わりが唐突過ぎて違和感が半端無かった。こういう物語だったのね。出てくる絵本が元となるファンタジーかと思ってた(^O^;) 絵本が魔法なのではなく、パコちゃんが魔法なんだね^^2014/02/05
アメフトファン
68
最初は大貫のあまりの非道ぶりに怒りを覚えましたがパコちゃんの純粋、可憐さに大貫の頑なだった心がメロメロに溶けてから入り込み一気に読んじゃいました。パコちゃんは過酷な状況にも負けずに明るく生きている。そんな姿を見て頑張らなきゃいけないなと励まされましたね〜。そして人って最後の最後でも変われるんだな。そんな事を大貫から学びました。2015/01/15