内容説明
「先生、勉強ってすてきですね。目の前のおおいがひとつひとつ取れていくようです」。1972年東京下町の夜間中学。教師として勤務し出会った、恵まれない生い立ちの、読み書きできない生徒たち。人は、なぜ学ぶのか?文字を獲得することで取り戻せる笑顔と誇りがあった…。映画「学校」の原点となった名作、待望の文庫化。
著者等紹介
松崎運之助[マツザキミチノスケ]
1945年満州生まれ。三菱長崎造船技術学校・長崎市立高校を経て、明治大学第二文学部を卒業。教師として江戸川区立小松川第二中学校夜間部を経て、足立区立足立第四中学校夜間部に勤務後、定年退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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zero1
44
自分の名前が漢字で書けない。足し算や引き算ができない。そんな人が今の日本にもいる。病院に行く際は手に包帯を巻き誰かに書類を書いてもらう。学べない状況は不条理を生む。事情により学ぶ機会を失った人が挑戦する場。それが夜間中学。病気や親の無理解、今では不登校などで需要は高まっている。生徒たちは学ぶことで生きる証を手にれる。塚原、見城といった先輩たちに鍛えられた著者。寅さんで知られる山田洋次監督の映画「学校」のモデルにもなった。読メのレビューが2件というのはとても残念。2019/08/01
へくとぱすかる
34
著者自身が苦労を重ねてきた人であるのに、夜間中学の教師として出会った生徒の生きてきた道は、さらに想像を絶する世界だった。簡単に「貧困」「親の無理解」などと要約することなど、とてもできない。この人たちを救う手立てもせず、切り捨ててきた日本は、本当に豊かな国であったのか、私たち自身が踏み台にしてきたのではなかったか、大いに反省を迫られる。心の中で泣かずには読めない。が、本当は、そこから先を考えなければならないと思う。2017/01/01