内容説明
捨てられた外れ馬券を万馬券に造りかえ、換金した額は10年間で10億円―。男はデザイナーとしての自分の技量を試すため、指先一つで百発百中の「夢馬券」の偽造にのめり込んだ。紙、インク、すかし等、次々と馬券の改良を重ねる日本中央競馬会に、職人技で挑んでいく。逮捕した福島警察署も驚愕した犯罪の全貌を追った衝撃ノンフィクション。
目次
序章 画工+浅草+競馬
第1章 馬券偽造入門
第2章 換金マニュアル
第3章 最強のパートナー
第4章 逮捕の予感
第5章 公判
第6章 塀の中
著者等紹介
中山兼治[ナカヤマケンジ]
1940年福井県生まれ。中学卒業後上京、浅草の印刷会社に就職する。その後、独立し、デザイン工房を立ち上げる。71年、馬券の偽造に手を染める。以後、偽造歴は約十年におよぶ。その間、二度の逮捕を経て、83年、有価証券偽造・同行使・詐欺の罪で山形刑務所に服役。現在は、一流企業のロゴ・看板等の制作に励んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hnzwd
36
馬券をいかに偽造し、現金と引き換えるか。執念とプロとしての業を感じました。1980年代に実際にあった事件を描くノンフィクションなため、細部に渡って感じるリアリティが凄い(意外とあっさり逮捕されてしまう所も含めて)。10年近く露見せず、逮捕後に自白しても、被害者側が認めなかった犯罪の裏側を描いた作品。プロ意識について考えさせられました。2015/09/26
seichan
4
卓越した技術と集中力とで、馬券の券面をミクロン単位で削り落とし、色鉛筆で偽造するという手口。物凄い職人魂と生真面目さを感じさせるものがあって、刑務所から出たあと、真面目に技術を生かして社会復帰しているというのも、うなずけるものがある。事実は小説よりも奇なり、という感じの面白い本でした。2015/01/30
うたまる
4
面白い。馬券の偽造により10億円を手にした男の回顧録。競馬好きが高じて偽造に至る訳だが、仕事になってしまうと「競馬はギャンブルでも、馬券造りはギャンブルではない」とプロ意識が出てしまうところが可笑しい。犯罪者ではあるが職人技と職人魂は凄まじく、連続14時間の作業は良く言えば神域、悪く言えば狂気。一読して吉村昭『破獄』の主人公を彷彿させた。他に、紙幣のスカシ技術が「すき入紙製造取締法」により、政府以外は使用できないことと、偽造で詐取した配当金を返さなくていいことに驚いた。2013/04/01
Humbaba
4
昔の馬券は、磁気式ではなかったため技術と根気さえあれば偽造することが可能であった。自分の技術と、相手の警戒具合を調べることで、確実に問題は回避できる。他者を信じてしまえば、そこからミスが起こることが多い。2010/03/05
hachi_gzk
4
今の磁気式の馬券ではなくて、印刷式馬券を印刷を消して、その上にあらたに鉛筆で印刷するという手法で10年で10億の大金を換金してしまった男の、本人の手記によるドキュメント本。印刷面全部を偽造するのではなく、ある1文字だけを丁寧に削り取り、そして鉛筆の粉を紙の繊維に埋め込んでいくという根気のいる作業をしながら、それでせしめた金を競馬に使ってしまうという悪循環。この本を面白くしているのは、根気と技術さえあれば誰でも馬券を偽造出来てしまった事で、この人はそれがそれが合ったという事だ。これは皮肉の物語だ。2008/07/22