内容説明
進学校である松山東高校になんとか入学した悦子は、女子ボート部を設立し、初心者ばかりの仲間を集め、エネルギーをボートに注ぐ。「自分の居場所」を見つけ、張り切る悦子だったが、貧血と腰痛に見舞われ、大事な大会直前、ボートが漕げなくなってしまう。若さゆえの焦燥、挫折、淡い恋心…。「あの頃」を切ないまでに鮮烈に描く傑作青春小説。松山市主催第四回坊ちゃん文学賞大賞受賞作。
著者等紹介
敷村良子[シキムラヨシコ]
1961年愛媛県生まれ。放送大学教養学部卒業。コピーライターを経て95年、「がんばっていきまっしょい」で松山市主催第四回坊っちゃん文学賞大賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
糜竺(びじく)
42
坊っちゃん文学賞大賞受賞作品。解説より「不機嫌で、根性がなくて、運動も苦手で、世をすねた女の子が、よりによってボートという、数あるスポーツの中でもとりわけ体力とチームワークを要求される競技を選ぶ。仲間を集め、一から自分を鍛えていく」そんな作品です。といって、ガッツとファイトで押しきるだけの、いわゆるスポ根物ではなく、受験の重圧、進路の悩み、片思いの恋など、色んな青春のひとこまひとこまが描かれていました。年齢を重ねていくにつれ、若い時の当たり前に駆け抜けた日々が非常に尊いものだったと感じさせる作品でした。2017/06/27
佐島楓
39
高校に女子ボート部を設立した悦子。勉強はからきしだし、ボートもなかなかうまくいかない。それでも、向き合っていたいものはある・・・。久しく忘れてしまった遠い日々。私は運動部に所属したことはないけれど、矢のように過ぎる時間の中にいたこと、それを意識すらしなかったことを懐かしく思い出した。パワフルな小説だ。2015/02/10
芳樹
35
昔々、田中麗奈主演の映画を観た記憶がありますが原作は未読。10月末にアニメ映画になるとのことでこの機会に読了しました。標題作品とその続編の二部構成。舞台は1970年代末の松山東高校女子ボート部で、『女子部員に焦点を当てた部活もの』の源流とも言える作品でした。70年代なので舞台装置の古くささは否めませんが、部活動や将来や恋愛に悩む思春期の高校生を描いているという点で、内容は令和の今読んでも全く色褪せていません。いつの時代も若者の悩みの本質は変わらないのだなと思ったりしました。劇場アニメを楽しみにしています。2024/05/19
BlueBerry
33
映画も見ていなかったの新鮮な気持ちで読み始めましたがどうもピンと来ませんでした。濱野京子さんのレガッタの方が良かったかな・・・。2013/10/26
ゐづる
31
ボート競技っていいですよね。海の上を滑るように走るボートの美しさとか、クルーの調子を合わせるキャッチ、ローという掛け声とか・・全員の息があったときのボートの動きは、完璧なハーモニーですよ。ま、僕は見てるだけなんですけど。そんなボートに賭ける悦子の青春小説が本作なんですけど、キラキラしつつも泥臭い感じがリアルです。松山の美しい海と、逆光のなかに滑るボートを思い浮かべながら読むと、なお良いと思います。2014/05/21