内容説明
戦後の混乱期。長崎で生まれた雅彦は、三歳の時に両親からヴァイオリンを与えられ、将来を嘱望され幼くして上京する。成長する中で雅彦は、大切な家族、友人、仕事仲間たちとの幸福な出会いと凄絶な別れをくり返してきた。ささやかだけど美しい人生を懸命に生き抜いた、もう帰らない人々への思いを愛惜込めて綴る、涙溢れる自伝的長篇小説。
著者等紹介
さだまさし[サダマサシ]
1952年長崎市生まれ。国学院大学中退後、72年に「グレープ」を結成、「精霊流し」「無縁坂」などが大ヒットする。グレープを解散後、シングル「線香花火」でソロデビュー
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takaC
94
感性に溢れた心に染み入る話。でも時系列がバラバラしててあまり読み易くない。というか正直言って読みにくい。脳内BGMがエンドレスの「精霊流し」というのは不可避なのかな。相乗効果は結構大。2015/10/06
chantal(シャンタール)
91
まっさんの自伝的小説。まっさんの歌には亡くなった大切な人を思う歌が多い。若い頃から身近な人が亡くなる経験をかなりして来たからなのだなと、この本を読んで納得。改めて「精霊流し」を聴くと感慨もひとしおだ。虫の知らせか、ただの不幸な偶然か、この本を読んでいる週末に、若い同僚が亡くなった。突然死だった。今もまだ信じられないでいる。月並だけれどまっさんが歌う「命の大切さ」や「生きることの素晴らしさ」が胸に迫る。昨日まで元気に目の前に存在していた人が突然居なくなってしまう、本当にただただ悲しい。安息吧,一路走好!2020/08/24
やも
89
昭和初期に1人の男が長崎で産まれた。櫻井雅彦。これは彼が生まれた時から、出会った人たちを見送るまでの話。家族、友人、初恋、別れ、貧乏、上京、仕事、長崎という土地、ヴァイオリン、戦争…。1つ1つのエピソードが彼を作っていく。振り出しに戻る、1回休み…双六のように歩む人生。いつあがりになるのかは分からない。けどきっとあがりの時に思い出す人はいるはず。エピローグでの春人との絆、泣けたよ。幸せなことだよ。私も私の自伝があったら、欠かせない人にもういっぱい出会ってるな、と思った。2023/02/15
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
66
さだまさしのデビュー作でもある自伝的小説。勿論フィクションも交えているのだろうけれど、彼の半生と重なる出来事が連作短編形式でつづられている。父親の事業の失敗、幼いころから続けてきたバイオリンでの挫折、祖母や従弟など親しき人との死別。彼の歌はグッと心に響く詩が多いのだけれど、こうした挫折や別離を経験しているからこそ人の心に響く作品が書けるのだなと感じた。★★★2015/01/12
名古屋ケムンパス
61
故郷、さださんの長崎の思い出。出会いと別れの記憶が精霊船の灯りと喧騒の光景のなかで哀愁の想いを深く漂わせて読者の胸中にも湧き上がってきます。バイオリニストの夢破れ、故郷に戻った雅彦の心に去来する友人、知人、家族への思い出は悲しくも美しく、セピア色の情景として限りなく優しく心に響き渡ります。2021/03/21