出版社内容情報
新たな一歩を踏み出すために。
大切な何かを取り戻すために。
思い出の品、お預かりします。
丘の上にある古いレンガの「別れの博物館」。
さまざまな想いを抱えた人々が、今日も博物館を訪れます。
「別れの博物館」収蔵物リスト
館長の<数>、喫茶店に飾られていた<額>、帽子作家の<針>、手話ボランティアの<耳>、数学教師の<名>、着られることのない<服>……。
【目次】
著者等紹介
標野凪[シメノナギ]
1968年静岡県浜松市生まれ。2018年「第一回おいしい文学賞」にて最終候補となり、19年に『終電前のちょいごはん 薬院文月のみかづきレシピ』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
シナモン
94
素敵な装丁と設定に惹かれて。役目を終え、いまはもう必要とされないものたちが並ぶ「別れの博物館」が舞台。収蔵品には猫のヒゲも。私だったら愛おしすぎてずっと手もとに置いときたいかも。淡々と静かな物語でした。2025/08/25
machi☺︎︎゛
81
物の言葉が聞こえる不思議な力をもったカケスが館長を務める坂の上にある博物館。ここで大切なものとお別れする為に来る人たちは、新たな一歩を踏み出すために、大切な何かを取り戻すためにやってくる。カケス自身も数字の把握能力が欠けていて「数」というものをこの博物館に預けている。自分にとってマイナスなものをプラスに変えられるそんな力をもらった気がする。2025/10/07
星群
75
全体的にぼんやりとした印象を受けました。収蔵番号【ニ】『あけぼの〜』がイチオシです。時が過ぎるなかでは切ないこともあるけど、捨てたもんじゃないなって思えます。ただ、収蔵番号【四】『彼岸花〜』の病院のエピソードは、重要なことが口頭ってのは疑問が残ります。独り言ってよりは独白に近いかな。着想を得たという、クロアチアの失恋博物館が気になります。2025/10/20
よこたん
36
“別れには悲しみや寂しさを伴ってはいても、必ずあたたかな思い出を抱いている。それが前を向き、歩み続ける指針になることを、誰もみなわかりきっている。” 持ち主の叶わなかった思いが詰まった品が、収蔵されたステージ上で物語る。小川洋子さんから、ひんやりぞわり感を差し引いたような印象。こんな博物館に私だったら何を預けたいかというよりも、入館、見学することに怖気づきそう。老化で失われていくあれこれが、とても切なくほろ苦かった。喫茶店の話は読んでいてきつかったが、最後にほっとできてよかった。2025/09/22
よっち
29
丘の上にある古いレンガの「別れの博物館」。様々な想いを抱えた人々が博物館を訪れる連作短編集。管理を任されたカケスという鳥の名を持つ青年視点で描かれる、新たな一歩を踏み出すため、大切な何かを取り戻すために、役目を終えて別れの博物館に持ち込まれる館長の数、喫茶店に飾られていた額、帽子作家の針、手話ボランティアの耳、数学教師の名、着られることのない服といった今はもう必要とされていないものや失くしたものたち。語られる持ち込んだ人たちの人生やそこに込められた思いが、大切なことを思い出させてくれる印象的な物語でした。2025/09/01




