出版社内容情報
医者、患者、病気、医学部、医学研究、医療。
生まれてから死ぬまで、人は病院と医者から離れられない。
「医」と「病」をめぐる6篇の傑作短編小説集。
学生時代に自殺した親友と瓜二つの男が、新人医師として自分が勤務する病院で働きだした。以後、不可解な事件が頻発する。彼は誰なのか?(「「爪の伸びた遺体」」)著書はベストセラー、新聞の人生相談も好評、患者からの信頼も厚い女性精神科医のもとに「二度と人前に出られなくしてやる」と差出人不明の脅迫状が届いた(「悪いのはわたしか」 )。信心がまったくない医学信奉者の内科医が、病院の近所にある神社で同僚外科医の絵馬「手術が無事に終わりますように」を誤って割ってしまった。以降、降りかかる悲劇 (「絵馬」 )。突如として髪が増え始め、若返った元教員・泉宗一(68)の数奇な体験 (「リアル若返りの泉」)など全6篇。
内容説明
患者、医師、看護師、研究者…。人は生涯、医療の囚人。「病」をめぐる6篇の傑作短編小説集。
著者等紹介
久坂部羊[クサカベヨウ]
1955年、大阪府生まれ。医師・作家。大阪大学医学部卒業。2003年、小説『廃用身』でデビュー。2014年、『悪医』で第3回日本医療小説大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
135
短編集。どれも後味の悪い(褒めてます)作品6話。久坂部さんらしいっちゃらしいのだが(褒めてます)中でも『爪の伸びた遺体』と『絵馬』が好い。最後の書き下ろし『リアル若返りの泉』の夫婦関係には、嗤えるようなザワリとするような・・2025/04/20
タイ子
74
医者の立場から、患者の立場から見える医療の世界を意外な展開と謎解きで描く6篇の短編集。「闇の論文」は初めはとっつきにくい内容だなと思っていたが、だんだん物語の趣旨に近づいていくと患者の立場から見えて来るがん治療という果てのない世界に惹かれていく。タイトルの「絵馬」が面白い。神社で見つけた同僚の絵馬には手術の成功を祈る願掛けがあった。信心をばかにしていた内科医の主人公が次第に変わって行く様が面白い。医療従事の著者が描くからこそ現場で経験する命と向き合う現実には信仰心も無視できないかも。医者も人間、時には…。2025/05/20
itica(アイコン変えました)
67
黒い6編に胸のあたりがざわざわ。中で印象に残ったのはミステリ風の「爪の伸びた遺体」の寒々としたオチや、どんどん若返る「リアル若返りの泉」の持ち上げてからど~んと落とされる結末。まあ、そんなうまい話はないということか。 2025/04/21
シャコタンブルー
63
医師ならではの鋭い観点からの6話の短編集。この中では「爪の伸びた遺体」が一押し。何とも奇妙な遺体、得体の知れない男、コム・イル・フォの因縁、先の読めない展開と驚くべき結末は鮮やかだった。「リアル若返りの泉」そんな奇跡は起きないだろうと思いながらも、先が気になり一気読み。失ったものを求めるよりも今あるものを大切にしよう(笑)2025/05/05
Ikutan
63
心がざわつく六つの短編。自殺した友人の遺体の爪に違和感を感じた主人公の正体に驚きを隠せない『爪の伸びた遺体』。これはリアルで実際ありそう『闇の論文』。怪文書に怯える精神科医のお話『悪いのはわたしか』。神仏の力を嘲笑し、絵馬を奉納する外科医を馬鹿にした内科医の結末に笑えない『絵馬』。強欲で落ち目の作家に翻弄される秘書のお話『貢献の病』。髪の毛が増えて若返った年金暮らしの元教諭の変化に驚く『リアル若返りの泉』。どのお話も最後に捻りが効いていて、ブラック満載。面白かった。2025/04/04