内容説明
仙台の国立大学・杜乃宮大学医学部法医学教室。解剖技官・梨木楓は、上司である若き准教授・今宮貴継とともに日夜、警察から運び込まれる身元や死因が不明の死体を解剖している。彼らが遭遇するのは、温泉旅館で不審死した編集者(「恙なき遺体」)、顔面を破壊され手足が切断された沼の中の死体(「誰そ彼の殺人」)、限界集落の小さな池に遺棄された老人(「蓮池浄土」)、降りしきる雨の中、轢き逃げで道端に放置された女子高校生(「安楽椅子探偵、今宮貴継」)など、どれも悲惨な人間の最期の姿だ。事故か殺人か―。今宮と梨木は、遺体の外傷を観察、内臓の全摘出後、病理検査にかけ、細胞の一つ一つまで検分。犯人でさえ気づいていない証拠にたどり着く…。
著者等紹介
小松亜由美[コマツアユミ]
秋田県大仙市生まれ。東北大学医療技術短期大学部衛生技術学科を卒業し、臨床検査技師免許取得。現在、某大学医学部法医学教室にて解剖技官を務め、これまで多くの異状死体の解剖に携わる。『誰そ彼の殺人』が単行本デビュー作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
233
図書館の新刊コーナーで見つけて読みました。小松 亜由美のデビュー作です。私小説的法医学ミステリ連作短編集でした。少し説明がくどい感じがしますが、今後スキルを磨いてリーダビリティが上がっていけば、面白い作家になるかも知れません。2019/07/02
machi☺︎︎゛
100
現役の解剖技官の作者さんが書かれた医療ミステリ。謎を残して亡くなった人の解剖から得た情報で真相を暴いていく連作短編集。現役というだけあって専門用語バリバリで細かな描写、詳しくは知らなくてもその場面が目に浮かんで背筋が寒くなった。解剖から生前のそんな事まで分かるのかとびっくりした。2022/12/25
よむよむ
100
臨床検査技師免許を持ち、現在、某大学医学部法医学教室にて解剖技官も務める変わった経歴の持ち主の著者。その経歴を生かし、主人公私は法医学教室で解剖技官を務める梨木楓。上司の今宮准教授とともに警察から運び込まれる身元や死因が不明の死体を解剖している。解剖の描写は精緻で、蘊蓄も興味深い。探偵役は観察眼鋭い法医学者の今宮だが、短編ということもあり簡単に謎が解け少し物足りなさも感じる。それでも梨木と今宮の会話の掛け合いもテンポがあり可笑しく、本作がデビュー作のようなので、今後の作品も読んでみたい。2019/12/04
あも
91
現役解剖技官が描く法医学ミステリという事で期待したが、現場の生きた雰囲気というよりは知識の羅列・ひけらかしに見えたのが勿体ない。仙台の法医学教室に務める楓が主人公。変人という程でもない上司のイケメン准教授・今宮。その友人で県警のエリート検視官の小倉(イケメン)。ワトスン役の楓が頓珍漢なことを言い、探偵役の今宮がからかいながらも専門知識をキーに事件を解決に導く…という王道展開ではあるが、現役専門職でないと書けない内容かというと疑問符。ってかタイプの違うイケメンに挟まれつつ私は迷惑なんですけど~?な楓に萎え!2019/09/02
papako
89
朝日新聞の書評で気になっていたけど、こちらの評判がイマイチだったけど、結局読みました。確かに皆さんのレビュー通りかな。いまいち法医学の解剖が、物語に直結しない。専門用語や知識を並べただけでは読者は納得しないんです。ちょっとふるくさい文章と内容でした。それに解剖技官の梨木が上から目線でなんだかな。謎と解剖がうまく噛み合えば、もっと面白くなりそうなので、これからに期待します。2019/10/14