内容説明
三年前に地元の広島で起きた土砂災害で両親を亡くしている気象庁の予報官・田久保は、地球温暖化などの影響で、益々頻発し大型化する台風の対応に忙殺されていた。私生活で家族を顧みることはほとんどなかったが、認知症を患う義母の介護のため、東京都の多摩ニュータウンにある妻の実家に転居する。直後、史上類を見ない超大型台風が太平洋で発生し、日本に向かった。広島の惨状を胸に刻みながら、進路分析や自治体への避難勧告に奔走する田久保。それでも関東では土砂崩れが次々と起こり、被害は多摩ニュータウンにも及ぶ。自然災害超大国ニッポンだから生まれたサスペンス大作。
著者等紹介
高嶋哲夫[タカシマテツオ]
1949年岡山県玉野市生まれ。94年「メルト・ダウン」で第1回小説現代推理新人賞、99年、「イントゥルーダー」で第16回サントリーミステリー大賞・読者賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
195
人の心にもハリケーンやタイフーンが吹き荒れるんだなぁ。そんな事を思った読後感。異常気象はいつどこで発生するかはわからないが、地震や台風に火山・・気象庁からの警報は『オオカミ少年』なんかじゃない。大げさでも無い。常が大切なのだ。高齢化社会になっているこの国だもの。序盤は遅々として捗らなかったが、この妻・恵美の認知症の母の事が問題になってくるあたりから、どんどんのめり込んだ。息子の問題もリアルだ。自衛隊員・中村の苦悩には心が痛い。気象庁の予報官の夫の不倫もどきは余計だったような気がするが、面白く読了した。2018/02/05
Yunemo
66
どちらに視点を置いて読みこなせばいいのかな、なんてことをまず想って。中途半端でもったいない。これから直面する異常気象の実態or介護の問題、主軸はどちら、と悩みながら読了。標題ハリケーンという名の下で、著者のこの分野の専門性を存分に生かして、私等に警告の意味で衝撃的な事象を題材にしてくれることを期待したのですが。如何せん、期待し過ぎた自身の思い違いのところもあって。満身創痍の日本列島の弱点を、もっともっと著者独自の視点で表現して欲しかったかな。自然の猛威と人間の不遜から来る変化への歪み、期待し過ぎたのかも。2018/02/11
oldman獺祭魚翁
60
異常気象をメインに親の介護・イジメなど今の日本が抱える社会問題を盛り込んだ小説。しかし300ページではあれもこれもと取り込みすぎて、いずれも薄い内容になってしまった。このタイトルなら異常気象と土砂災害だけにテーマを絞って書くべきだったろう。この著者にはそれだけの力が有るだけに残念。2018/03/03
ren5000
53
ハリケーンが主題のパニック小説と思ったのになんか家族の再生小説だったので期待して読んだ分がっかりしました。読んでる最中、いつ巨大台風がくんねんとずっと思ってて気づいたら残り30ページでやっとかと思ったらさらっと終了してしまった。これは帯がちょっと煽りすぎでJAROに報告したいぐらいです(笑)2018/04/10
井川浩
47
首都感染を読んで高嶋さんのすごさを知り、この書を手に取りました。個人的にはもう少し台風の猛威の様子がたくさん書かれているかと思ったのですが、前段の様々な登場人物の背景とやり取りが中心となっていた感じを受けました。 母親の認知症への対応が描かれているところは、私自信が同じような体験をしているだけに、読んでいるときにはかなり心拍数が上がってしまいました。2020/08/24